SCORE CARDBACK NUMBER

春場所で魁皇が見せた、33歳、オトコの意地。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2006/04/20 00:00

 優勝(朝青龍)および三賞(殊勲賞/白鵬、敢闘賞/旭鷲山、技能賞/白鵬・安馬)を独占。さらに、十両以上の関取9人すべてが勝ち越したモンゴル出身力士たち。朝青龍が成し遂げたジャパニーズドリームを手本に、破竹の勢いで春場所を呑みこんだ。

 史上初のモンゴル出身力士同士の優勝決定戦。最後は朝青龍が貫禄と経験の差を見せつけて白鵬を豪快に裏返したが、その力は拮抗。「速さ・強さ・巧さ」で他を寄せつけなかった横綱が、「巧さ」のみで手繰り寄せたのが今場所の優勝だった。朝青龍らしくない相撲内容でも集中力で乗り切るところはさすがだが、これまでの稽古の貯金は完全に無くなった。

 一方、白鵬の安定感には目を見張るものがあった。大関獲りの重圧の中、鋭さと重みを増した低い立合いからの力強い四つ相撲。終盤こそ初優勝を意識して体が動かなくなったが、難なく13勝を挙げ、場所後に大関昇進。「朝青龍独走時代」の終焉、「青鵬(朝青龍と白鵬)時代」の幕開けを強烈に印象づけた。

 影の薄くなった日本人力士の中では、大関魁皇が大和魂を見せてくれた。

 白鵬と対戦した魁皇はカド番。過去8度のカド番はすべて2桁勝利で楽に脱出したが、今回は瀬戸際に追い込まれた。6日目で4敗、「引退」の2文字が現実味を帯びる中で連日必死の土俵が続く。18年間の力士生活を納得した形で終わりたい。切れかかる気持ちを師匠やファンが後押ししたが、思いのままに動かぬ体に鞭打ち闘う姿は、正直痛々しかった。左差し右上手という絶対の形を持ち、豪快極まりない相撲が持ち味。力士らしい理想的な巨体に、人懐っこい笑顔で根強い人気の魁皇だが、持病の腰痛を抱え本調子には程遠い相撲の連続だった。

 7勝7敗で迎えた千秋楽は、大関昇進を確実にし、初優勝をも目指す白鵬との一戦。形勢不利は明らかだった。しかし、立った瞬間、絶対の形になった魁皇は、全盛期ばりの怒涛の寄りで白鵬を圧倒。まだ相撲を取り続けたいという執念が、奇跡ともいえる完勝劇を生み出した。

 同期の若貴や曙はすでに引退して久しい。大相撲新時代への流れは最早止めようがないが、お目付け役として今も欠かせない存在だ。魁皇には一場所でも長く現役でいてほしい。

ページトップ