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大型ルーキーがついに迎える「真実の瞬間」。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2007/03/08 00:00

 今年のチャンピオンカーニバル随一の好カードが目前に迫ってきた。3月3日後楽園ホールで行われる日本フェザー級王者・梅津宏治(30)対、挑戦者・粟生隆寛(22)のタイトルマッチである。

 この際「WBC世界12位」などという粟生の肩書は忘れよう。3歳でグローブを手にしたボクシング・エリート。史上初の「高校6冠」を達成し、超大型ルーキーとして「ボクシング版・松坂大輔」のような脚光を浴びてきた男である。

 「東の粟生か、西の亀田か──」

 以前このコラムで、こう書いたこともある。しかしその後亀田は関西から東京の協栄ジムに鞍替えし、急ぎ世界に駆け上がった。これとは対照的に、粟生は亀の歩みを続けた。帝拳ジムの方針でジックリと熟成に時間をかけ、魅力的なサウスポーのカウンター・パンチャーぶりに磨きをかけてきたのである。

 「相手の動きに合わせて、どのパンチを使うか、瞬時に判断できるセンスは抜群」(浜田剛史氏)とその才能を評価される。攻撃を仕掛けてくる相手に対し、鮮やかなカウンターを決めて沈める高等技術も駆使する。これまで13戦して勝ちっぱなし(8KO)。「あえてやりにくい相手を選んだ」というジムの方針で、苦い経験もした。メキシコの古参に翻弄されて、勝利インタビュー中に悔し涙を流したこともある。

 若い頃の苦労は金を出してでも買えという通り、たっぷりと投資してきた粟生は、いよいよ結果を出さなくてはならない時がきた。月並みな表現だが、今度の日本王座初挑戦で粟生もようやくにして「真実の瞬間」を迎えることになった。

 一方、強力な挑戦者を迎え撃つ王者梅津は、これまで12勝6敗の低い勝率が示すように、「平均的な選手」(粟生)である。昨年10月渡邊一久を攻略した王座獲得戦も番狂わせと言われたが、今度はビッグネームを食って、さらに脚光を浴びようと手ぐすねを引く。

 そんな中、勝って当然といわれ、内容が問われる粟生には大きなプレッシャーだろうが、これは注目ルーキーの宿命でもある。試合の抱負を聞かれて「(梅津が)ダウンしたことがないそうなので、倒しがいがある」と挑発的に言い放ったのも粟生らしい。チケットはすでに完売。ファンも楽しみ方を知っている。

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