SCORE CARDBACK NUMBER

“リングの職人”の勇気ある挑戦。  

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2007/04/05 00:00

 観客を一瞬たりとも退屈させない──日本のボクシング界で、この男エドウィン・バレロ(25歳)の評価は急速に高まりつつある。

 デビュー以来21連続KO勝ち(うち1ラウンドKOは19回)。これがバレロでなく他のボクサーの記録であれば、眉つばものだが、そうではない。4年間の予定で東京に住むベネズエラ人はすでにWBA世界S・フェザー級のチャンピオンであり、72秒で終わった正月の初防衛戦でも日本のファンに知的な殺し屋ぶりを強く印象づけた。

 今やバレロの試合は一級のスリラーである。相手を罠に追い込むように、グイグイとプレッシャーをかけ、反撃に出んとするところ、見計らったように正確なカウンターを浴びせる。アッという間のKO劇。この調子で倒し続けると、やがて対戦を希望して手を挙げる命知らずが現れなくなるのではないかと心配したくなる。それほど、強い。

 ただ、このギネスブックものの記録を今後さらに伸ばしていくとしても、本人は記録にあまりこだわりを持たない。バレロのこだわりは、アメリカでスーパー・ファイトに出場し、巨額を稼ぐことだが、これも夢ではなくなってきた。

 次にリングに上がるのは、5月3日有明コロシアムのトリプル世界タイトル戦。相手に選ばれたのは、本望信人という試合時には30歳になるボクサーである。はっきり言って、パワーはない(29勝5KO4敗2分)。ボクシングもキャラクターもおよそ地味で、一部玄人受けする、リングの職人のようなボクサーである。

 しかし、相手の必殺強打を無にしてしまうディフェンス・マスターであり、現役屈指の試合巧者としても定評がある。目の上をカットしやすいのが心配だが、それがなければ、“バレロを最も苦しめたボクサー”になっても不思議ではない(同時に1、2回で眠る可能性もあるが)。

 とはいえ、本望自身は「負けて元々」などと開き直ってなどいない。それどころか「平常心で戦えれば、きっと勝負になる。日本人の強さを見せたい」と、巡ってきたチャンスに野心満々なのである。たとえ王座を奪うことに失敗したとしても、バレロの連続KOを阻止することができれば、それだけで「勝者」である。

 本望の勇気ある挑戦に注目したい。

■関連コラム► ベネズエラの問題児はどこまで世にはばかるか。 (09/04/13)
► 1RKOを続ける男の真価が問われる一戦。 (05/09/29)

関連キーワード
エドウィン・バレロ

ページトップ