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「HERO'S」から、ヒーローは生まれるか。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byShuntaro Abe

posted2005/04/14 00:00

「HERO'S」から、ヒーローは生まれるか。<Number Web> photograph by Shuntaro Abe

 PRIDEに続く大規模な総合格闘技イベント「HERO'S」がスタートした。競い合う団体があった方が、その業界は活性化する。格闘技業界全体がHERO'Sの出現に歓迎ムードだったのはそのせいだろう。

 しかしPRIDEという完成度の高い総合格闘技イベントが世に出ている以上、PRIDEとは違った何かを提示しなければ、存在価値を見出すことはできない。同じテイストだったら、二番煎じになるだけだ。その意味でリングスの活動休止以降、3年間も表舞台に出てこなかった前田日明氏をスーパーバイザーとして全面的に表に出したのは正解だった。

 PRIDEのキーワードを「現実」とするなら、HERO'Sのそれは「幻想」。前田氏は現役時代からそのキーワードを身にまとう希有な存在であるからだ。

 そうしたムードの中、宇野薫、須藤元気ら中量級戦士たちを売り出していく。筆者は勝手にそう解釈していたが、いざ蓋を開けてみると大会のコンセプトがハッキリと見えてこない。中量級の試合が、前半戦に集中していたせいだろうか。

 柔道家vs.K―1戦士など他流試合中心のマッチメークも気になった。興行のアクセントとして腕相撲の世界王者同士の一騎討ちなどの色モノを入れることに異論を唱えるつもりはない。マニアだけではなく、一般大衆をターゲットとした場合、そういったマッチメークは“掴み”として必要になってくる。

 しかし総合が日本に根付きつつある現在、気持ちや根性だけで勝負する他流試合だけを見せられて満足する観客は少ない。技術で競い合う総合も見なければ、物足りなくなってしまう。この日、一番観客席を沸かせたのは、宇野vs.ヨアキム・ハンセンの一騎討ち。元修斗ウェルター級王者の肩書きを持つ両者は、最後までどちらが勝つかわからない技術と気持ちが重なり合った攻防を見せてくれた。

 ケガを押して“伝説のキックボクサー”ラモン・デッカーを相手に勝利を収めた須藤元気はやんわりと警鐘を鳴らす。

「最近、格闘技は選手主体ではなく、興行主体になっている気がする。興行があるのはうれしいけど、このままだとクオリティの高い試合は見せられない。選手と興行が共倒れになってしまう危険もある」

「HERO」は選手でなければいけない。

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