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34歳、杉山愛が挑む「勝負」の相手。 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2009/07/30 06:00

34歳、杉山愛が挑む「勝負」の相手。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

 杉山愛がウィンブルドンで長いトンネルを抜けた。シーズン開幕直後の全豪では3回戦に進出したが、その後、ツアー8大会連続で1回戦負けを喫していた。全仏の1回戦で敗れた杉山は、疲れた表情でこう言った。「練習ではよくても、試合で力を出せない」。プレーの歯車がどこか狂っていたのだろう。

 9年間、二人三脚でやってきた母親の芙沙子コーチと離れ、元デ杯選手の寺地貴弘をコーチに迎えて心機一転で臨んだウィンブルドン。杉山は1回戦でシード選手のシュナイダー(スイス)を破る。個人戦では約5カ月ぶりの勝利だった。「やっと自分らしさが戻ってきてくれた」。ゲームセットのコールと同時に、うれし涙が溢れていた。

杉山が勝負する相手は自分自身である。

 イギリスから一度帰国した杉山は、2週間ほど日本に滞在しただけで、次の遠征先である北米に向けて旅立った。8月末に開幕する全米オープンに照準を定め、前哨戦4~5大会に出場するという。

 杉山はこの北米遠征を「勝負」と位置づける。7月20日現在の世界ランキングは53位。昨年の北米遠征で好成績を残しているため、同等の成績を残せなければランキングは自動的に下降する。「70位、80位で戦う自分は想像できない」という杉山には、まさに正念場だ。

 だが、彼女が勝負する相手は、ランキングの数字ではない。ウィンブルドンで低迷を脱し、その後も充実した練習ができている。万全の準備で臨む北米遠征で、今後に向けての手ごたえを得たい。勝負とは、そんな意味だろう。

「20位、30位くらいのレベルにいて、トップ選手ともしっかり戦える自信があるかぎりはチャレンジし続けたい。その手ごたえが得られるかどうか。自分自身と向き合いながら戦いたい」

 と杉山。7月5日には34歳の誕生日を迎えた。ここ数年、四大大会のたびに聞くのは「この会場に来るのはもしかしたら最後になるかもしれないから、悔いの残らないプレーをしたい」という言葉だ。

いつかくる引退の日に向けて「一日一日が挑戦」。

「トップ選手と戦える自信がなくなった時が引退する時なのだろう」という杉山。いつかやってくるその日に向けて、「今は一日一日が挑戦」という言葉に誇張はないだろう。全米オープンが終わるまで、「自分と向き合う」厳しい日々が続くことになる。

■関連コラム► 若手を育てるために。女王・杉山愛の決断。 (2007年5月31日)
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