SCORE CARDBACK NUMBER

ナダルとフェデラーが
紡ぐ新たなライバル物語。
~先延ばしになった主役交代~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2009/07/03 06:00

ナダルとフェデラーが紡ぐ新たなライバル物語。~先延ばしになった主役交代~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

ここ数年両膝の腱炎に悩まされていたナダル。全仏敗戦後、医師から休養を勧められていた

 ラファエル・ナダル(スペイン)が、ひざの故障でウィンブルドンの前哨戦を欠場すると聞いた時は、幽霊にでも出合ったような気分だった。

 彼がひざに古傷をかかえているのは公然の事実。だが、今年の初めに全豪を初制覇した時点では、故障は完治したものと思われた。2週間、足腰への負担が大きいハードコートを走り回ってもナダルの動きは軽快だった。また、決勝でのロジャー・フェデラー(スイス)との4時間超の死闘を見れば、ひざは問題なしと判断するしかなかった。だから、故障の再発は思いがけない知らせだった。

 ナダルは結局、ウィンブルドンを欠場した。「僕のテニス人生で最もつらい決断だった」と話したナダル。フェデラーは「残念だね。彼は最高のライバルであり、僕たちはこれまで素晴らしい試合をしてきたからね」とナダルを気づかった。

急展開したナダルとフェデラーのライバル物語。

 ナダルは全仏の4回戦敗退とウィンブルドンの欠場で、大量のランキングポイントを失った。フェデラーが全仏に続きウィンブルドンを制すれば、ナダルに代わって世界ランク1位に返り咲くことが確定している。

 全豪の決勝でナダルに敗れたフェデラーが、表彰式で悔し涙を流した時、我々が漠然と感じたのはフェデラーの「限界」だった。'08年全仏とウィンブルドン、そしてこの全豪と、四大大会の決勝でナダルに連敗。ライバルに勝てなくなったフェデラーが、キャリアに終止符を打つことを考え始めるのではないか。テニス界にはそんな不安が巻き起こった。

 ナダルとフェデラーが競い合うことで、男子テニス界は活気のある状態が続いている。そのライバル関係が終れば、男子テニスは最大のセールスポイントを失ってしまう。ところが、全仏から風向きが大きく変わったのだ。フェデラーは全仏初制覇で生涯グランドスラムを達成し、復活。一方のナダルは故障で失速。これは、だれも予想できない展開だった。

 いずれナダルの時代が来るのは間違いないが、主役交代はもう少し先でもいい。二人は、テニス界だけでなくスポーツ界全体でも有数のライバル関係にある。この新展開で、ライバル物語に新たな一章が書き加えられることになるだろう。ナダルの失速は残念だが、“読者”には物語の続きを読む楽しみが残された。

■関連リンク► 全仏11回目の挑戦でフェデラー悲願達成。(2009年6月20日)
► フェデラーが逃れたモンスターの呪縛。 (2009年1月6日)

関連キーワード
ラファエル・ナダル
ロジャー・フェデラー

ページトップ