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WBC組、岩村明憲のメジャーにかける思い。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

posted2006/08/17 00:00

 第1打席でヒットが出ると、気分よく固め打ちできるタイプの選手がいる。そのひとりが、ヤクルトの岩村明憲だ。7月29日の阪神戦で5打数5安打。1試合5安打は、'01年4月29日以来、自身2度目のことだった。

 もともとメジャー志向の強い選手である。今年の契約更改では、それまでメジャー行きの条件としていた日本一、個人タイトル獲得という項目を契約から外したと言われる。それだけに3月のWBCにかける思いは人一倍強かった。しかし、2次リーグの韓国戦で右太もも肉離れ。サードのポジションは若い今江敏晃(ロッテ)に譲った。故障はレギュラーシーズンにも響いた。

 そんな岩村が、調子を取り戻してきたのは7月。きっかけは福留孝介(中日)の助言だった。WBCの時、イチローを中心とした青木宣親(ヤクルト)、西岡剛(ロッテ)、川崎宗則(ソフトバンク)ら、若手選手のグループとは別行動をとり、年の近い福留と行動をともにしてからの仲である。

 オールスター戦を前にして、怪我で欠場していた福留に見舞いの電話を入れた時、福留がバッティングの際の重心の置き方についてヒントをくれた。それまで2割台だった打率は、10回を超えるマルチヒットの“固め打ち”で7月末には3割1分まで上がった。

 昨年から、肉親、知人の死が重なった。昨夏には最愛の母を失い、WBC中には妻の父親が亡くなった。そして先月7月19日には、入団当時の球団社長だった田口周が他界した。'90年代に4度のリーグ優勝を果たし、ヤクルトの黄金時代を築いた田口前社長は、岩村を何かと気にかけてくれていた。岩村は訃報を聞いて「メジャーで活躍する姿を見せたかった」と涙したという。

 メジャースカウトのひとりは、「9本の三塁打を放った3年目のころの働きができれば、文句なしに活躍できる」と言う。「うちは経験者と出戻りばかりだから、メジャーのチームにいるようなもの」と岩村は語る。リグス、ラミレス、ラロッカに囲まれて任される3番は、確かに海の向こうで戦う予行演習になるだろう。

 足を使ったバッティング、そして得意の固め打ちができれば、おのずと夢に近づくはずだ。

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