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三度目の正直ならず、惜しくも散った仲里繁。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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photograph bySumio Yamada

posted2005/05/26 00:00

三度目の正直ならず、惜しくも散った仲里繁。<Number Web> photograph by Sumio Yamada

 日本人ボクサーがフランスで初めて世界戦のリングに立つという歴史的な試合を取材してきた。仲里繁が王者マヤル・モンシプールに挑んだ4月29日マルセイユのWBA世界S・バンタム級タイトルマッチ。こちらもフランスの試合は初体験だが、おかげで長い間抱いてきた自らの「偏見」にも気づかされた。

 フランスといえば「蘭の男」ジョルジュ・カルパンティエの昔から華麗なボクサー型が主流だという先入観もある。しかしこの日「パレ・デ・スポール・ド・マルセイユ」で見たものは予想とは対極にある力勝負の素朴なボクシングだった。前座からメインまで、女子の世界戦も含め熱闘の連続。そして満員の会場がもっとも沸いたのがメインカードである。

 ボクシングのマッチアップで「ボクサー対ファイター」には闘牛士と牛が対決する心理戦の面白さがあるが、この日はチャンピオンのモンシプール、挑戦者の仲里ともに猛牛同士で、真っ向勝負の打撃戦となった。3度目のこれが最後の挑戦と思い詰めている仲里はいつものスロースターターではなく、開始ゴングから短期決戦の覚悟で打って出た。偵察時間も端折って、ボクシングの原点を見るような殴り殴られの壮烈なパンチの応酬。といって素人の喧嘩ではない。モンシプールはせわしなく動き、手を出しながらもしっかりガードを固めて被弾を最小限にする努力を怠らない。一方仲里は力ずくで振り回すように見えて、守りの固い相手が手を出す一瞬の隙を狙おうと、ほぼ同時に左フックを振る。双方にとり危険なタイミングで打ち合うスリリングな展開が続いた。

 何度か仲里得意の左フックがカウンターとなった。しかしなんというタフネス。ラリオスのアゴを割った強拳をもってしてもモンシプールは倒れない。この日の仲里の最大の誤算は、相手が無尽蔵のスタミナの持ち主だったことか。我慢比べのような殴り合いで、より消耗が激しかったのは仲里の方だった。6回、モンシプールの右カウンターにとらえられると仲里は力尽きたように崩れ落ちた。

 「3(分)×5(回)=15分の勝負、他のことは考えないでチャンスがあれば攻め切ろうと思って戦った。あれで倒れなかったら完敗です」。これほど勇敢で潔く散った例も最近珍しい。

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