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大ヒットの傑作映画と不敗女王の関係。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2005/06/23 00:00

 日本でも公開された映画「ミリオンダラー・ベイビー」は面白かった。映画メディアも絶賛、軒並み五つ星評価である。

 監督・主演のクリント・イーストウッドは、筆者にとって昔から贔屓の俳優の一人だが、この作品でも老トレーナーのいかにも自然体の演技はすばらしかった(唯一100万ドルを賭けた試合の終わり方には引っ掛かるものがあった。ラウンド終了後の反則打でマギーをダウンさせる場面。アクシデントならまだしも、あれほど「悪意を持ったパンチ」はボクサーの生理に合わず、受け入れがたい)。

 それはさておき、本コラムで主役に抜擢するのは、マギーに反則打を振るう「ダーティ・ファイター」ビリーを演じたルシア・レイカーである。この女優の本業はボクサー、しかも女子ボクシングで「パウンド・フォー・パウンド最強」と怖れられた不敗の女王なのである。

 数年前にデラホーヤ戦の前座に出場したレイカーを見たことがあるが、なるほど強かった。女子ボクサーは骨格の構造上どんな優れた選手でも男子のトップ選手のパンチのようにスムーズには繰り出しにくい。話題のレイラ・アリですら、時にぎこちないフックを打つことがあるのだが、このレイカーは例外。長身からまるで男子の一流選手のように滑らかで切れのあるパンチを放って見事だった。因縁のライバル、マーチンがレイカーの挑戦に「セックス・チェックを受けてからにして」と注文を付けたというエピソードもなるほどと納得したものである。

 オランダ出身の女王はこれまで17戦全勝14KO。強過ぎて対戦相手に恵まれず、長らく開店休業状態だったが、副業で話題作に巡り合ったのを機に俄然運が向いてきた。ほぼ絶望視されていた宿敵マーチン戦が実現の運びとなったのだ。7月30日ラスベガスで行われる試合は「ミリオンダラー・レディー」と銘打たれ、勝者には題名通り100万ドルの報酬が約束されている。映画人気に便乗した興行だが、女子ボクシング史上最大規模の試合となること必至である。マーチンは近年の女子ボクシングのパイオニア的存在で、スポーツイラストレーテッド誌の表紙に起用され有名になったが、同じ37歳ながらすでにピークは過ぎ、今回はレイカーの引き立て役を務めることになるか。

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