SCORE CARDBACK NUMBER

“沖縄の倒し屋”仲里が掴んだラストチャンス。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2005/04/28 00:00

 「今度が最後のチャンス、判定で勝つつもりはありませんよ」

 沖縄の倒し屋・仲里繁がこう言った。

 4月29日フランス・マルセイユに乗り込んでWBA世界S・バンタム級王者マヤル・モンシプール(30歳)に挑戦する。

 これが3度目の世界挑戦。過去の2度はいずれもメキシコの王者オスカー・ラリオスに判定負け。初挑戦でラリオスのアゴを複雑骨折させながら倒し切れなかった無念さが、現役に未練を残していた。

 「負ければ引退」の覚悟で臨んだ昨年10月の挑戦者決定戦では、若手ホープ木村章司と引き分け。「生き残ったのか、残らなかったのか……」と困惑の表情を浮かべて仲里はこう言ったものだ。

 宜野湾出身の32歳。家庭では8歳を頭に3人の子供の優しい父親は、そろそろプロボクサーとして進退をはっきりさせなければならない時期にきていた。

 自力で挑戦資格を勝ち取ることはできなかったものの、機会は海の向こうフランスからやってきた。チャンピオン側からのご指名――表現を変えれば、おいしい相手として選ばれたわけだ。

 「ボクシング王国」沖縄は具志堅用高以来7人の世界王者を輩出してきた(JBCの記録では6人だが、沖縄人はIBF王者新垣諭を含んで「郷土出身は7人」と胸を張る)。しかし平仲明信を最後に13年間沖縄出身の世界王者は出ていない。プロばかりかアマチュアの高校総体でも優勝者が激減し「沖縄」ブランドは確実に過去のものとなりつつある。

 ボクサー弱体化の原因を、本土復帰後の県民の生活環境の変化に求める見方も、間違ってはいまい。現在も失業率日本一の沖縄ではあるが、それでも昔ほどにはハングリーではない。

 本土復帰直後に生を受けた仲里は伝統を受け継ぐ最後のオキナワンファイターかもしれない。そのスタイルは、18人の相手をKOした破壊的な拳にモノを言わせる勇猛なファイターだが、人のいい性格ゆえか「スロースターター」のきらいもある。モンシプールもエネルギッシュなファイターだから、試合は噛み合うだろうが、仲里としては開始ゴング直後からエンジン・フル・スロットルで行かないと、惨敗も喫しかねない。

 眠れる獅子ならぬ、“眠れるシーサー”の豪打爆発シーンを見たいものだ。

ページトップ