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巨人を変えられるか。名参謀・伊原春樹の雷。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

posted2007/03/08 00:00

 大盛況のソフトバンクキャンプに比べ、いまひとつ盛り上がりにかける巨人・青島キャンプ。その中で一際目立つ存在がいる。今季から野手総合コーチに就任した伊原春樹だ。

 守備・走塁コーチとして1980年代の西武黄金期を陰で支え、「西武の頭脳」と呼ばれた。厳しいノックで、石毛宏典や辻発彦らの名手を育て上げたことも記憶に残るが、野球ファンに伊原の名を知らしめたのは、やはり、'87年、巨人との日本シリーズだ。第6戦の8回裏2死一塁、三塁コーチャーだった伊原が、センター、クロマティの緩慢プレーを見て一塁走者の辻を一気に本塁に生還させたあのプレーである。

 「自分を買ってくれるところで、喜んでユニフォームを着るのがプロ」というのが身上で、チームを引き締めてくれるコーチを探していた巨人再建のために名乗りをあげた。

 近ごろは選手に対して自信を持って叱れるコーチが少なくなった。しかし、伊原は違う。妥協と甘えを許さない厳しい姿勢は、いまや貴重な存在である。

 キャンプでは、早速、伊原イズムを発揮した。2月11日の紅白戦初戦、バントのサインを2度も見落とした矢野謙次に対して、「バカヤロー!」と怒鳴り、1回表の攻撃が終わった時点で、1年目の育成選手である松本哲也に交代させた。

 17日に行われた全野手参加のバント練習では、オリックスから移籍してきたベテラン、谷佳知が失敗すると、「いつまでケージの中に入ってんだ!」と雷を落とし、さらにミスを繰り返すと、「はい、交代!」と、ファンが見守る中、マイクで冷たく言い放った。

 巨人が強かった時代には、コーチたちの役割分担がはっきりしていた。誰かが選手を怒鳴りつけると、牧野茂ヘッドコーチが選手の家族をフォローして、士気が下がるのを防いでいた。その絶妙なバランスが、黄金時代の支えになっていたと言ってもいい。

 ソフトバンクの王貞治監督は、当時の記憶からか、今でもコーチ陣に「好かれるコーチになるな」と伝えている。

 伊原自身も、自分の役割は承知している。いかに嫌われ役になるか──。誰かがうまくフォロー役を担えば、巨人の再生も見えてくる。

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