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代表の合宿地をボンに決めたジーコの真意とは。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byShinya Kizaki

posted2005/11/24 00:00

代表の合宿地をボンに決めたジーコの真意とは。<Number Web> photograph by Shinya Kizaki

 ボンの街に行って、がっかりした。

 W杯期間中の日本代表のホテルと練習場が、“4年に1度のW杯”という基準で見ると意外にしょぼいのだ。ホテルは街中にあるために部屋が狭く、高級ホテルというよりはビジネスホテルに近い(事実、会議によく使われる)。練習場は市営で、普段は無料開放中。プロの施設と比べたら、月とすっぽんだ。

 でも、よくよく考えたら、大もうけしている日本サッカー協会が、金をケチってここを選んだとは思えない。そこにはジーコ監督の深い意図が隠されているに違いない──。

 一般的に“サッカー大国”は、選手を隔離できる郊外のホテルを好む。ドイツは高い壁に囲まれたベルリンの“城ホテル”、オランダはフライブルク郊外、黒い森のど真ん中のホテル、アルゼンチンはニュルンベルク近郊、アディダス本社の“接待用ホテル”に泊まる。ボンを拠点とするポルトガルも、山の上の高級ホテルを選んだ。外部を完全に遮断して、選手をプレッシャーから守ろうという考えだ。

 しかし、ジーコはその逆を選択した。ホテルに閉じこもるのではなく、どんどんドイツの街に出ていけと言わんばかりに。ピッチの中も外も、ジーコのキーワードは“自由”なのだ。自由がなければ、人生もサッカーもおもしろくない。

 日本代表はノープレッシャーのとき、実力を発揮する傾向がある。2004年の欧州遠征(チェコ戦&イングランド戦)しかり、今年のコンフェデ杯しかり。だが、勝つことが義務になった途端に、自分たちのサッカーを見失ってしまう。W杯予選では明らかに臆病になっていた。だからジーコは、W杯期間中に選手を隔離して独特の緊張感に包むよりも、街にとけこませて「W杯でも、自然体でいいんだ」ということをわからせようとしているのではないだろうか。

 今までの日本代表は、ジーコのブラジル基準に振り回されてきた。ジーコの要求するレベルは高いうえに、説明が下手だからかなりの混乱を招いた。今やっと基準(=4バック)に近づきつつあるが、3年もの月日がかかってしまった。

 「自由を楽しめ!」というジーコの意図が、今度はすぐに浸透することを祈りたい。グループリーグはわずか15日間で終わってしまうのだから。

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