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ダントーニ流、「何もしない」監督術。 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2007/05/17 00:00

 フェニックス・サンズのヘッドコーチ、マイク・ダントーニのまわりにはいつも笑い声が溢れている。イタリア人の血が流れる陽気なダントーニがジョークを口にするからだ。

 プレイオフ1回戦、サンズが完勝した試合について聞かれたときもそうだった。「コーチングがよかったのではなく、選手がすばらしかっただけさ」とダントーニが冗談とも本気ともつかない口調で言うと、記者の間から笑いが起こった。

 本人は意図していなかったかもしれないが、このコメントはダントーニに対する世間の批判を笑い飛ばしているようでもあった。選手に自由を与え、司令塔のスティーブ・ナッシュにすべてを任せるダントーニのやり方に対して、「ただ見ているだけで何もコーチングをしていない」と揶揄する声もあるのだが、それに対して「見ているだけの何が悪いんだ?」と考えるのがダントーニ流なのだ。

 実際、試合中にほかのコーチほど指示を出さないからといって、コーチングを放棄しているわけではない。ナッシュは「他のコーチとは違うことに重点を置いているだけのこと。彼はいいコーチだ」と断言する。試合中、プレーごとに細かな指示を出すことはないが、それぞれの選手が自由に能力を発揮できるようなチームの土台を作る努力をしている。土台を作ったあとはあまり多くを言い過ぎず、選手に方向性と自由を与える。コーチをしたことがある人なら知っているように、口を出しすぎないことは、細かに指示を出す以上に難しいことだ。

 「そのおかげで僕ら選手は創造性を発揮することができるし、それだけ相手にとって守るのが困難なチームとなるんだ」とナッシュは言う。

 ケセラセラと何も考えずにコーチングをしているようにも見えるダントーニだが、実際にはコートを離れても、一日中、バスケットボールのこと、サンズのことばかりを考えて時間を過ごしているという。試合後、夜遅くに家に帰ってからも、試合のビデオを繰り返し見て研究する。バスケットボールに集中するあまり、シーズン中はゴルフも読書も、他のことはまったく身が入らないのだという。

 「何もしない」裏では誰よりも多くの時間が費やされている。さながら水面下で必死に水をかく水鳥のように。

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