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世界的金融危機に
アマ関係者が持つ恐怖。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2008/11/20 00:00

世界的金融危機にアマ関係者が持つ恐怖。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 「これからすごく不安なんですよ」

 ある競技団体の職員と話しているとき、こんな言葉がこぼれた。何が彼を不安にさせているのか。連日報道されてやむことのない金融危機である。

 「うちは裕福じゃない中、用具メーカーなど多くの企業に支えてもらっていました。でもメーカーが経営でダメージを受けると私たちにもはねかえってくるんじゃないかと思うと不安ですね」

 不安は彼だけの、彼が属する競技団体だけのものではない。注目度が増し、プロ化が進んだ面もあるとはいえ、五輪競技の多くは恵まれない環境にある。大きな支えとなっているのは企業である。自ら競技部を持つことで、あるいはスポンサーとして競技団体の運営資金を供出することで。存在は大きい。先日、森永製菓に入社の決まったフェンシングの太田雄貴が会見で涙を流した。それだけ資金に苦しんでいたのであり、企業の支援によって解放されることになったのだ。

 ところが、「企業スポーツ」が大きく揺らいだことがある。バブル崩壊後のことだ。ピークの1999年には、50を超える部が廃止された。バレーボールのユニチカと日立、バスケットボールの住友金属など名門チームも次々に消えていった。各競技にダメージを残したのは記憶に新しい。再びそれが繰り返されるのではないかという不安に、今、現場は包まれているのである。

 10月末に会ったカーリングの本橋麻里もこんなことを言っていた。

 「カーリングは歳をとってもできる息の長い競技ですが、日本ではまだそうじゃないんです」

 トリノでブームとなったカーリングは、以前よりは競技を続けやすい環境になった。それでもか細い糸でつながっているにすぎない。いつ断ち切られるか憂いは消えない。まして今のご時世では……。

 「企業が支えるという日本のあり方が古い」と思う向きもあるかもしれない。企業に拠らず、地域に根ざしたあり方こそ理想かもしれない。だが、実際は海外でも、企業の支援によって競技に専念している選手は珍しくはない。

 企業スポーツは伝統を積み重ね、日本のスポーツに根付いている。企業の枠を越えた財産であるのだ。

 それは企業の方々にも伝えたい。

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