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継承される馬場、猪木それぞれのスタイル。 

text by

門馬忠雄

門馬忠雄Tadao Monma

PROFILE

posted2004/08/12 00:00

 夏はプロレスの稼ぎ時だ。還暦を過ぎた身にはかなりハードな取材日程が続く。ノアの7・10東京ドーム大会を終えてホッとしたのもつかの間、16、17の両日はWWEの日本武道館連続興行。翌18日は全日本の両国国技館大会で両国に1泊。翌朝の便で新日本・札幌大会に飛んだ。

 そこで目にしたものは第38代IWGPヘビー級王者藤田和之(猪木事務所)の凄まじい初暴れ。挑戦者柴田勝頼をぶちのめし、初防衛を飾ったのである。あのボブ・サップを撲殺したKOシーンの再現だった。

 開始4、5分までは柴田の繰り出すバックドロップ、スープレックスに付き合っていた藤田だが、サッカーボールキックを顔面に食らった途端、ガラリ野獣の目つきが変わった。マウスピースを吐き捨て、パンチから顔面へのヒザ蹴りで猛然と襲いかかった。あっという間の失神KO劇だった。柴田はそのまま担架で運ばれ、病院に直行する始末。「死にたい奴がいるから(試合を)やっただけ」とリングに仁王立ちの藤田。あまりの強さに観客もただ茫然としたのだった。

 そして熱帯夜の横浜に戻り、また呼び起こされたのは7・10の熱狂と興奮だった。GHCヘビー級王者小橋建太が秋山準をバーニングハンマーで倒し、V9を達成した極限のファイトである。そこには藤田戦とは違う、心にズシリと残る感動があった。

 秋山との死闘はギリギリの受けのレスリングの応酬だった。これでもかという大技の連続。小橋は自分の仕掛けたエプロンからのブレーンバスターで場外に落下、背中を打ち血を吐いたのを私は見逃さなかった。

 その日、東京ドームの通路で小橋と会った。試合後1時間たっても興奮から覚めていない。

 どうしてあそこまでやるのと思って聞くと、「秋山とやる時は覚悟している。あの時は気管が切れて窒息すると思った。咄嗟に吐くしかなかった。秋山が最高だからできた試合ですよ」と答えた。そんな小橋の荒い息遣いに重なったのは「相手を怪我させるのは下手な証拠。怪我する奴も下手」と説いた故ジャイアント馬場の受け身が基本のプロレス論。ノアに馬場の受け身の伝統が生きているのが嬉しい。攻撃重視の猪木スタイルか、ノアのプロレスか。この夏、新日本の「G1」8連戦のゴングが鳴る。

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