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移籍1年目で二冠達成。中村俊輔の貢献度。 

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鈴木直文

鈴木直文Naofumi Suzuki

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posted2006/04/20 00:00

 大混戦の予感を漂わせて始まった'05−'06シーズンのスコティッシュ・プレミアリーグは、セルティックの圧勝で幕を閉じようとしている。4月5日のハーツ戦に勝利し、2シーズンぶりに宿敵レンジャーズからタイトルを奪い返した。カップ戦とあわせ、二冠達成である。

 就任早々、CL予備戦での大惨敗という前途多難なスタートを切りながら、見事にチームを立て直して優勝に導いたゴードン・ストラカン監督の手腕は高く評価されてしかるべきだろう。しかもそれは、単に勝ち点を積み上げるという以上に、チームのプレースタイルを変革する過程でもあったのだ。その第一の布石が、中村俊輔の獲得だった。

 昨季限りで勇退した前任者のマーティン・オニールが、フィジカルを前面に押し出したシンプルなダイレクト・フットボールで黄金期を築いたのに対し、ストラカンはポゼッション重視のテクニカルなスタイルを志向した。しかも就任時点で、オニール時代の主力選手の多くが退団もしくは高齢化しており、若返りを図りつつ、即結果を残すという難しいミッションを与えられていた。

 再建の目玉としてセルティックが久しぶりに大金を投じた買い物は、無名の日本人セリエAプレーヤーだった。グラスゴーの人々には「日本ではベッカム級のアイドルらしい」程度の認識しかなかった。だが、彼らの心をつかむのに、ほとんど時間はかからなかった。一目すれば、その卓抜したスキルとヴィジョンは明らかだったからだ。

 ストラカンが用意したのは、フラットな4−4−2の右サイドという意外なポジションだったが、中村はそこから中央に入り込んで自由な発想を披露することを期待された。シーズン半ばには周囲とのコンビネーションが合い始め、チームは昨シーズンまでは見られなかった美しいパスワークで観客を魅了するようになる。マローニー、ペトロフ、ズラウスキら不可欠な選手は他にもいる。しかし、フィジカルを補って余りあるスキルだけで勝負する中村の異質さは、他の選手たちの脳裏にあったオニール・サッカーの残像を払拭する役目を果たしたに違いない。

 中村本人も、チームにおける現在の役割を楽しんでいるようだ。

 「利き足が左の奴を右サイドに、右の奴を左に置く監督って珍しいけど、それでこれだけ引き離して優勝しちゃうんだから、すごいよね」

 と、監督への賞賛を惜しまない。

 セルティックの圧倒的な優勝は、中村の加入とストラカンの手腕によってドリブルとショートパス主体の伝統あるスタイルに回帰することに成功した結果だった。

 だが、一部には「タナボタ優勝」とか、「史上最弱のチャンピオン」などと揶揄する声もある。確かに、レンジャーズがCLで健闘しながら国内リーグでは大きく低迷してしまったり、序盤戦で首位に立っていたハーツが奇妙な監督更迭劇を機に失速してしまうなど、他チームが自滅した感はある。カップ戦などで格下相手に脆さを露呈した試合も多かった。セルティックは未だ再建の途上にあるのだ。

 今季のCL優勝チーム次第ではあるが、現時点でセルティックは来季のCLをグループリーグからスタートする権利を手に入れた。ストラカンのサッカーが果たしてヨーロッパの強豪相手に通用するのか。「弱いチャンピオン」の汚名を払拭するのは来季のCLの舞台以外にない。

俊輔ノート

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