その時々で形を変え、内容も変化しながら数多くの選手を育ててきた球界ノートの代表「野村ノート」。
いまだ秘められたその全貌を解き明かすべくヤクルト、阪神、楽天時代の教え子たちに話を聞いた。
いまだ秘められたその全貌を解き明かすべくヤクルト、阪神、楽天時代の教え子たちに話を聞いた。
球界でノートといえばまず「野村ノート」。だが「野村ノート」は豪華革製の大判ノートでもなければ色とりどりのボールペンや特殊な記号を駆使する神秘的な記述法でもない。「野村ノート」は楽天イーグルス野村克也監督の著書である。
「野村ノート」にはベースがある。まず野村監督が現役の頃からつけていた「野村メモ」。これは捕手として受けたその日の投球の内容を詳細に記録したものだ。まだデータ分析などあまり本気でおこなわれていなかった'60年代前後からの貴重な記録である。もうひとつは「ノムラの考え」。こちらはタイガースの監督時代、選手に配布された戦術論、戦略論、データや心理の分析、さらには社会人としての生き方などを網羅した指南書。この中には評論家時代に読んだ著書、ホークス、スワローズの監督として戦った指導者としての体験もたっぷり盛り込まれている。
だから「野村ノート」は本のタイトルというより野球人・野村克也が語ることのすべて、「ひとり野球事典」と捉えたほうがいい。
新人選手が「キャンプの前に野村ノートを読みました」と胸を張る光景はすでになじみのものだ。しかし本がベストセラーになった2005年よりはるか以前から、「野村ノート」すなわち野村監督の語る野球論は選手たちに大きな影響を与えていた。
広澤克実は弱いチームで強いチームに勝つ方法を学んだ。
広澤克実は野村監督の下で黄金期を築いたスワローズの中心メンバーである。野村監督の野球論は広澤にそれまでまったく知らなかった野球の見方を示してくれた。
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photograph by Toshiya Kondo