待ちに待った大舞台での初勝利、そしてその翌週には全英3位。彼女は、いかにしてスランプを乗り越え、偉業を達成し得たのか。復活を読み解くカギは、1年前の初夏に交わした会話にあった。
「一番理想的だと思うのは、ヤワラちゃん(柔道の谷亮子)の人生なんですよ」
宮里藍の勇姿を眺めながら、彼女の口から聞いたそんな言葉を思い出していた。エビアン・マスターズで米ツアー初優勝を果たし、続く全英女子オープンでもメジャー優勝に迫る大活躍。幾多の試練を乗り越えた足かけ4年を経て、ついに栄光に輝いた宮里は、さまざまな想いが入り混じる笑顔と涙を見せたが、同時にその表情からは柔らかい女っぽさも感じ取れた。
だからだと思う。あの日の会話が不意に鮮明に思い出された。宮里に大人の女の色香を強く感じ、ドキッとさせられた昨年初夏。今思えば、そんな変化が起こったあのころこそが、宮里の最大の転機だったのだろう。
「女の幸せ」に思いを馳せるゆとりが宮里を変えた。
昨年初夏といえば、'07年後半にドライバーの深刻な不調に陥った宮里が、やっと試合でも打球をまっすぐ飛ばせるぐらいまで回復し始めていたころだった。だが、まだ危なっかしさが残り、彼女のゴルフは依然「病み上がり」。そんなタイミングなのに焦りや苛立ちを見せず、穏やかな柔らかい微笑を浮かべる宮里が妙に女っぽく感じられ、会話は自然と「女の幸せ」談義へ発展していった。
「30歳ぐらいで子供ができて、2年ぐらい休んで出産して、もう1回、体を作り直して……なんか、ヤワラちゃんって、すごいなあって思っちゃう。まあ、私にちょうどそのころに結婚できる人がいるかどうかはわからないし、だから本当に漠然とだけど、30代前半ぐらいに子供が欲しいなあって思う。子供ができたらゴルフをやめたいって感じではないんですよ、私は……」
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Frederic Froger/AFLO