ヘレス・デ・ラ・フロンテーラはアンダルシア種の馬とシェリー酒の産地であり、毎年motoGPが開催されるオートバイ好きの聖地である。
去る6月13日、ここでちょっとした祭りが起きた。町一番のサッカークラブ、ヘレスCDが創立62年目にして初の1部昇格を成し遂げたのだ。
ヘレスは熱心なファンと慢性的財政難が有名な、今季の1部20チーム中最小規模のクラブである。2008年の予算は700万ユーロ(約9億6000万円)で、ビッグクラブのスター選手1人の年俸にも及ばなかった。ホームスタジアムであるチャピンは2万1500人収容だが、'08-'09シーズンの一試合平均観客数はおよそ1万人だ。
そんなヘレスが歴史的1部デビューに向けて、どのように準備を進めているのか。実際に確かめるべく、昇格達成から1カ月半ほど経った8月のある日、車を南へ走らせた。
ヘレスは由緒正しき“フットボール”の街。
スペイン南部アンダルシア州の夏は強烈だ。慣れない者にとって日差しは殺人的に強く、サングラスをしていないと目が痛くなる。ちょっと日向にいると、肌がジリジリ焼けていくのが実感できる。
それでも内陸のセビージャから行くと、ヘレスの町は過ごしやすい。町中の温度計は37度を示していたが、連日40度オーバーの都会から来ると、これが涼しく感じられる。
シェリー酒のおかげで16世紀末から英国と交流していたヘレス・デ・ラ・フロンテーラは、スペインで最も早く“フットボール”に触れた土地のひとつだ。記録によると、英国人によって最初の試合が行なわれたのは1870年11月。町最初のクラブ“ソシエダ・ヘレス・フットボール・クラブ”も1907年、シェリー酒産業に従事する英国人の手で立ち上げられた。ヘレスCDはそれが改編と改名を経て、1947年に生まれ変わったものだ。
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