のっそりと、ゆっくりと。思いを噛み締めながら一歩、二歩――。
3月31日、広島との本拠地開幕戦に、つば九郎が帰ってきた。しばし羽を休めた冬を越えて、春の雨に霞む空をぐるりと見渡す。544日ぶりの神宮球場。選手たちを出迎え、池山隆寛監督と“手羽”を交わしたその姿に、スタンドから「おかえり!」の声が温かく降り注いだ。

球界に衝撃が走ったのは昨年2月のこと。30年以上にわたってつば九郎を担当してきた球団社員がキャンプ地の沖縄で急逝した。名前も顔も秘めた、1人のスタッフ。悲報は全国ニュースとなり、野球ファンは突然の別れを惜しんだ。それは、いち球団のマスコットを全国区の人気者へと押し上げたスタッフの功績の証だった。
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photograph by Minami Nagao
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