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[同門対談]斎藤明日斗×本田奎「兄弟の愛と嫉妬」

2022/10/07
近年、次々と若手有望株が登場する宮田利男一門。「アスト」「本田さん」と呼び合う2人は、幼少期から現在まで切磋琢磨して互いを高め合ってきた。幼馴染であり、ライバルであり、仲間でも家族でもある存在は、彼らに何をもたらすのか。その絆と葛藤を語り合う――。

 季節の変わり目を告げる雨がやむ頃、本田奎五段と斎藤明日斗五段が顔をそろえた。ともに宮田利男八段門下。東京・三軒茶屋将棋倶楽部で子供の頃からしのぎを削り、それぞれプロ入りを果たしたひとつ違いの兄弟弟子だ。「アスト」、「本田さん」と呼び合えば、自然と緊張もほぐれ頬が緩む。その笑顔の下に、たくさんの悔恨と絶望、そして希望を隠して。

斎藤 対談みたいなのは初めてですね。そもそも出会ったのもいつだか全然覚えてないんですよね。

本田 三軒茶屋(将棋倶楽部)で、小3と小2くらいの時? 私は親から「必ず棋士が教えているというので連れていった」と聞きました。

斎藤 僕はもともと千駄ヶ谷子供将棋クラブに通っていて。初段くらいまでいったんですけど、地元の神奈川県大会で「絶対コイツに負ける」みたいな子がいて「三軒茶屋に行ってる」と聞いたので、「じゃそこ行くか!」って。それがきっかけですね。

本田 師匠には最初6枚落ちで指してもらったんですけど、当たり前に負かされるんです。それで「悔しかったらもう1回来なさい」というような入りだったと記憶しています。特に「弟子にしてください!」みたいなこともなかったんです。奨励会に入ってからは人並みに苦労もありましたけど、師匠は要所で連絡をくれたり、でも深入りはしないというような、昔も今も良い距離感ですね。

斎藤 僕、(宮田八段を)プロって知らなかったんです。「面白いおじさんだなー」って(笑)。でもめっちゃ強いので、後からビックリした記憶があります。当時、師匠からの扱いが本田さんとは違って、道場に体験の子が来ると「アイツは強いんだ」って紹介されるのが本田さん。僕はギャグ担当、みたいな感じでした。でも僕は師匠と気が合うんです。世代は違うけど、僕のちょっとお調子者なところを受け入れてくれるところがすごくやりやすくて、居心地が良い。ピリッとされた方が師匠だったら無理だと思うんですよ。もちろん厳しくするところは厳しく、急所のところは教えてくれていたので、自分にとってはバランスが良かったのかなと思います。

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photograph by Kazufumi Shimoyashiki

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