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[求道者が語るリベンジの舞台裏]堀島行真「次は競技に100%の比重を」

2022/02/25
メダルを逃した平昌から4年後の北京で、笑顔が咲いた理想高き求道者。だが、その目元には、涙の跡があった。流した涙の理由とは? その舞台裏を本人が振り返る。

 2月5日にフリースタイルスキー男子モーグルで日本選手団第1号のメダルを獲得した堀島行真はその翌日、選手村内のインタビュールームに姿を現した。レースでの気迫あふれる表情とは打って変わり、穏やかに大会を振り返った。

 ゴール後に両拳を高く突き上げ、メダルセレモニーでは頬が緩み笑顔を見せた堀島だが、「何度も泣きました」と語る。

 今シーズンの堀島はワールドカップ全戦で表彰台に上がり、五輪種目のモーグルだけに限定すると7戦中3勝。W杯総合順位は1位と僅差の2位、「金メダルも狙える」と期待を集める中で迎えた大会だった。

 いざ4年に一度の祭典が始まると、想定はもろくも崩れ去る。10位までに入ればストレートに決勝へと進める2月3日の予選1回目は16位。2月5日の予選2回目に臨まなければならなくなったのだ。

「(5日の)朝起きたときや会場入りするときに涙が出てきました」

 日本のエースの胸中に緊張と不安が募る。失敗を想像すると、隠してきた感情が溢れ出た。

「予選でもう1回失敗したら、前回より悪いことになる、前回よりよくしたいと思ってやってきたのにと思うと……。強がっていたけれど、4年間、辛かったんだな、と感じました」

 前回――'18年平昌五輪でもメダルを有力視されたが決勝2回目で転倒し11位。あの残像を乗り越えるため、北京にやってきた。

「平昌で金メダル候補と言われていて、自分も狙っていました。それに値するような技術やフィジカルはあったと思いますが、試合へ向けてのコンディション作りなどがうまくいかなかった。それ以上に、心の部分が追い付いていなかった。それが大舞台で力を発揮できなかった理由だと思います。その後、自分をコントロールしてきて、心も成長してきたと感じています」

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photograph by Asami Enomoto

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