2月5日にフリースタイルスキー男子モーグルで日本選手団第1号のメダルを獲得した堀島行真はその翌日、選手村内のインタビュールームに姿を現した。レースでの気迫あふれる表情とは打って変わり、穏やかに大会を振り返った。
ゴール後に両拳を高く突き上げ、メダルセレモニーでは頬が緩み笑顔を見せた堀島だが、「何度も泣きました」と語る。
今シーズンの堀島はワールドカップ全戦で表彰台に上がり、五輪種目のモーグルだけに限定すると7戦中3勝。W杯総合順位は1位と僅差の2位、「金メダルも狙える」と期待を集める中で迎えた大会だった。
いざ4年に一度の祭典が始まると、想定はもろくも崩れ去る。10位までに入ればストレートに決勝へと進める2月3日の予選1回目は16位。2月5日の予選2回目に臨まなければならなくなったのだ。
「(5日の)朝起きたときや会場入りするときに涙が出てきました」
日本のエースの胸中に緊張と不安が募る。失敗を想像すると、隠してきた感情が溢れ出た。
「予選でもう1回失敗したら、前回より悪いことになる、前回よりよくしたいと思ってやってきたのにと思うと……。強がっていたけれど、4年間、辛かったんだな、と感じました」
前回――'18年平昌五輪でもメダルを有力視されたが決勝2回目で転倒し11位。あの残像を乗り越えるため、北京にやってきた。
「平昌で金メダル候補と言われていて、自分も狙っていました。それに値するような技術やフィジカルはあったと思いますが、試合へ向けてのコンディション作りなどがうまくいかなかった。それ以上に、心の部分が追い付いていなかった。それが大舞台で力を発揮できなかった理由だと思います。その後、自分をコントロールしてきて、心も成長してきたと感じています」
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