今も記憶に新しい、'19年の「レーン旋風」。遅咲きの最強牝馬とタッグを組んで掴んだグランプリ連覇と母国での栄冠の思い出を、遠くオーストラリアから語ってくれた。
「リスグラシューに関してはグッドメモリーしかありません」
そう語るのはオーストラリアの若き有望株ダミアン・レーン騎手。2020〜'21年シーズンにはメルボルン地区でリーディング2位、先の8月に開幕した'21〜'22年シーズンも同地区2位(9月30日現在)と、活躍を続ける彼は、JRAの短期免許を取得して来日していた'19年、リスグラシューと出会った。
最初にタッグを組んだのは宝塚記念(GI)。決戦4日前の6月19日、栗東に駆けつけ、初めて彼女の背中を確かめた。
「元気一杯で前進気勢が凄くありました。そうやって自分から走ろうとする馬は時として追ってからの反応が悪くなるけど、リスグラシューにはそんなことはありませんでした。ゴーサインを出してからの反応も良くて、前走から少し間は開いていたけど、状態は良いと感じました」
そもそも騎乗前に何らかのイメージを持っていたのかを問うと「もちろんレースぶりはしっかりチェックしていました」と振り返る。
「勝ちこそしなかったものの香港でも好レースをしていました(直前のクイーンエリザベスII世Cが3着で前年の香港ヴァーズが2着)。宝塚記念と同じ距離のエリザベス女王杯も勝っていたので、良いイメージを持っていました」
その上で、レース前は「末脚を活かす競馬をしたい」と考えていた。ところが実際にゲートが開いてから選択したのは前での競馬。それも逃げるキセキの2番手につけた。リスグラシューのそれまでのレースぶりからすると、奇策とも呼べる先行策だった。
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photograph by Takuya Sugiyama