#1011
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<巻頭インタビュー>久保建英「面白いチーム、面白い監督と、面白いサッカーができる」

2020/09/17
ビジャレアルという新天地で、久保建英の新たな挑戦がはじまった。

 ベンチ前、久保建英が急いで黄色のユニフォームに袖を通す。水を口にしながら、肩に手を置くウナイ・エメリ監督の指示に何度も頷いた。時間はあまりない。

 リーガ開幕節、ビジャレアル対ウエスカ。久保の新シーズンはベンチから始まった。マスクをし、数m先の攻防を眺めた。後半はライン際でアップを続け、出番がやってきたのは試合終盤のことだ。

 厳しいマークが久保への警戒の表れだ。ファーストタッチでのドリブルは倒され、その後も何度もファウルで止められた。

 与えられた20分という時間が開幕時点のチーム内における久保の立ち位置を物語る。右ではチュクウェゼが優先され、前線にはパコ・アルカセルとジェラール・モレノがいる。代表選手が集う中で定位置を手にする難しさは、誰より久保が理解している。

「才能は果てしない。ただ、それを十分に発揮するには、まずはポジションを得なければならない」

 静寂のスタンドで、可能な限りの声量で実況したラジオ局「コペ」のルベン・マルティンの意見だ。

濃密な1年を経て、新たなシーズンへ

 久保はライン間でボールを受け相手エリアに迫ったが、試合は動かなかった。ビジャレアルは開幕戦に弱い。またしても勝てなかったチームに、現地メディアには失望の見出しが並んだ。

 久保が岡崎慎司のもとへ歩み寄る。リーガでは何人もの日本人がプレーしてきたが、日本人同士が1部の舞台で戦うのは初だ。語り継がれる試合になるかもしれない。

 ロッカールームへと入った久保は、しばらくすると再びピッチに出てきた。出場時間が短かったからか、負荷をかけ翌日からの練習に備えるのだろう。コーチと言葉をかわし、ゆっくりと走り始める。1周、2周、3周――。新たなホームスタジアムの感触をたしかめるかのように、久保は静かに夜の芝の上を走り続けていた。

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photograph by Daisuke Nakashima

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