昨年は1カ月の休養を決断するほど苦悩しつつも、2度目の賞金女王に輝いた。ときに感情を爆発させながら勝ち進む25歳のクイーンが思い描く、「最大の目標」への道筋とは。(Number998号掲載)
怒りは敵のはずだった。
岡本綾子や宮里藍など、過去に海外でも活躍した日本女子ゴルフ界のレジェンドたちは、淡々としたプレーに徹して、決して大きく表情を変えることはない。常にフラットな心でプレーすることを鎧に、様々な重圧を跳ね除けて勝負の世界を生きてきた。
ところがここに喜怒哀楽でコロコロと表情を変える選手がいる。2019年の国内ツアーで7勝を挙げ、2度目の賞金女王に輝いた鈴木愛だ。鈴木は心の動きをむしろエネルギーにすらして結果を出してきた。そんな珍しいタイプの選手でもある。
「僕も20年くらいバッグを担いでいますが、あれだけ感情の起伏が激しくて、あれだけ上にいける選手は見たことがない」
こう語るのは昨年も7試合で鈴木のバッグを担いだプロキャディーの森本真祐だった。森本が言うように、プレー中の鈴木の感情は激しく揺れ動く。長いバーディーパットを沈めた瞬間には弾けるような笑顔をこぼし、危ういところでパーセーブできればホッと胸を撫で下ろす。逆にパットを外し、ショットのミスをしたときには怒り、不貞腐れ、不機嫌な表情を隠そうとしない。
怒りを抑えるのは合わなかった。
「もともと喜怒哀楽が激しくて、すごく負けず嫌いな性格なんです」
自分の性格をこう分析する鈴木は、過去にはそんな自分を変えてみようとチャレンジしたことがあったという。
「プロになってから(感情を)フラットにしてみようって、3試合ほど意識してやってみたこともあります」
確かにショットもスコアも安定した。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Satoko Imazu