ドラフト当日の朝8時、ファイターズの大渕隆スカウト部長は、八王子にある早実のグラウンドにやってきた。管理人の許可を得て、誰もいないグラウンドに入る。
清宮幸太郎がボールを打ち続けてきた左打席に立って、想いを馳せた。必ず外で1時間のバッティング練習をしてからでないと試合に行けなかったという清宮。まだ暗いうち、午前3時、4時から打っていたこともあったのだという。大渕はその場にしゃがみ込んで、左打席の土を手に擦りつけた。そしてその手を洗うことなく、ドラフト本番に臨んだ。
またファイターズか――クジで清宮を引き当てたあと、そんな声が飛び交った。しかしクジの勝率を手繰ればマリーンズが群を抜いて強く、ファイターズは下から数えたほうが早い。3年前には有原航平を引き当てたものの、ここ2年は4連敗だ。大渕が言う。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Takuya Sugiyama