米国の女性作家、ジョイス・キャロル・オーツは、ボクシングのリングをこう書いている。
「一国の法律が適用されない伝説的な空間のひとつ」(『オン・ボクシング』)
そこでは競技ルールにより殴打が認められる。想像したくないが死ですら「あってはならぬがありうる」範疇の出来事だ。
だからこそボクサーの生還場所でもあるコーナーのトレーナーは選手の安全と健康に心を砕く。
山中慎介、メキシコ人、ルイス・ネリの連打にさらされ、ロープに押しやられる。リングサイドのボクシング記者なら、こういう場合は劣勢の側の尻を見る。反撃の力を残していてもロープに座ると危ない。レフェリーがストップに踏み切るサインとなるからだ。
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photograph by KYODO