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打たれても、人生は進む。~清原和博に本塁打を打たれたことのある人生は、悪くない~

2017/02/08

 若かりし頃、天才と呼ばれた子役やスポーツ選手が堕ちていくゴシップに人が吸い寄せられるのはなぜか? 多分、小さな天才たちの成長譚を「自分たちが」見守ってきたという自負が、そうさせるのだろう。そして甲子園という場所は、一握りの才能を持った野球少年たちがパブリックな存在、つまり「みんなの○○」になる格好の機会となる。

 本書は、清原和博の告白ではない。甲子園で歴代最多13本塁打を放った清原和博にホームランを打たれた9人が、その経験でどう人生を変えていったかを告白するノンフィクションだ。本人不在のまま、周囲の声の集積で人物像をあぶり出す手法は昔からあるが、一本の本塁打を晴れ晴れと語る男もいれば、30年以上経った今も後悔し続ける男もいる。その語り手の温度差は、有吉佐和子の小説『悪女について』を彷彿とさせ、奥行きと読み進むスリルを与えている。

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photograph by Katsuro Okazawa/Wataru Sato

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