この原稿を書いている今、試合から2週間近く経過しているというのに、まだ衝撃の余韻が消えやらない。世界チャンピオンの落城シーンは何度も見てきたが、今回の内山高志の敗北は過去のどの場面とも違っていたように思える。
試合後、他のボクサーや関係者に感想を聞いたが、異口同音に「ショックだった」と言う。「ボクシング界全体が暗いムードになっている」と話したのは大橋秀行・大橋ジム会長だった。その暗さは、「喪失感」に置き換えられるものだろう。
どんな常勝チャンピオンでも、いつかは負ける時がくる。山に登ったら、降りなければならないのと同じほど分かり切ったことだが、まさかそれが今だとは思えなかった。あの内山が負けるはずがない、コラレスを倒して具志堅用高の13度防衛記録に迫るV12の達成はまず間違いないと思っていた。「内山本人ではなく、我々に油断があった」とかばったのは渡辺均ワタナベジム会長だったが、錯覚は我々メディアにもあったかもしれない。
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