因縁めいた話が好きなのは取材記者の習い性だ。錦織圭がメンフィス大会決勝で米国の18歳テーラー・フリッツと戦うと決まった時には、錦織当人が18歳でツアー初優勝した'08年の米国デルレイビーチ大会を思い出さずにはいられなかった。フリッツが優勝すれば、8年前の錦織がそうであったように一躍ツアーの新星に飛躍する――立ち上がり、錦織が0-3と劣勢になった時には、そんな妄想が頭をもたげようとした。
試合開始からの14ポイントのうち錦織が奪ったのはわずか2ポイント。若者には怖いものなしの勢いがあった。試合後、錦織は「昨夜から重圧が出てきてよく眠れなかった」と話している。どうやら8年前との類似に気づいてしまったらしい。18歳のシンデレラボーイが上位に挑む構図は同じだが、立場は逆。負けられないという思いが硬さを招いたのか。
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