メイウェザー対パッキャオ戦の前景気が盛り上がっているが、実は米国でのボクシング人気はそれほど高くない。よく言われるように、ヘビー級の不振が大きいのは確かだろう。昔から体重無制限のこの階級の王者はアメリカのボクサーであることが当たり前だったのに、近年は傑出した選手が出てこない。主要4団体の世界王座からも長く遠ざかり、ウクライナの巨人ウラジミール・クリチコの長期安定王朝を許してきた。
そんな中で久々にアメリカらしいヘビー級の世界王者が誕生した。去る1月、ハイチ出身の王者バーメイン・スティバーンに12回判定勝ちし、WBCタイトルを獲得したデオンテイ・ワイルダーである。アラバマ生まれの29歳。2mを超す巨漢で、「ブロンズ・ボマー」の異称は'08年の北京五輪ヘビー級で銅メダルを獲得したことに由来する。米国の男子ボクシングでは直近の2大会で唯一の五輪メダリストである。この直後、トラック運転手だったワイルダーがプロ転向したのは、難病と戦う娘のためにも稼ぐ必要があったからという。
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