今年94歳のロジャー・エンジェル老の野球エッセイ集は、どれを推薦してもいいのだが、本書を選んだ理由は「終(つい)の別れ」と題する一編があるからだ。1971年のワールドシリーズ第7戦、パイレーツ勝利の瞬間、両手を広げる捕手とこれも手を広げジャンプする投手との歓喜の報道写真から語り起こされる名編だ。大リーグの頂点に立ったこの投手が、自分の投球を見失う悲劇。今なら、精神的な原因でプレーが出来なくなる“イップス”か、で終わる転落劇を、エンジェルは投手とその家族、チームメート、監督、コーチと、きめ細かく取材し、写真が撮られた4年後に発表した。作者の代表作と思う。
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photograph by Sports Graphic Number