ダニエウ・アウベスがバナナを拾って口に入れた。その後、口をもぐもぐとしながらコーナーキックの狙いを定め、ボールを蹴る。このわずか数秒の出来事を捉えた映像が、全世界を駆け巡ったことは記憶に新しい。
バナナはずっと人種差別の象徴的な記号だった。それをひょいと拾い上げ、皮肉を込めてパクリと食べたアウベスのユーモアは瞬く間に世界中の支持を得る。そして、同じようにバナナを食べる写真をSNSに投稿するサッカー選手や監督も続き、行為はひとつの運動となった。
だが、陣野俊史はその行動の顛末を冷静に見極める。確かにアウベスのパフォーマンスはあらゆる場所で話題となった。だが、本当に笑い飛ばして終わることなのか?
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photograph by Ryo Suzuki