教科書によく載っている「山椒魚」の作者。文豪には違いないが、それではちょっと物々しい気がする。簡潔で平明で、アユのはらわたの様なほろ苦いユーモアと余韻漂う文章の達人。井伏鱒二、号は尊魚堂主人、釣りの名手としても知られる大作家だ。
「おい井伏や、釣りは文学と同じだ」と釣りの師匠・佐藤垢石(こうせき)はいう。教わりたてはよく釣れるが、自分で工夫するうちに釣れなくなり、10年続ければまた釣れ始める。「先ず、山川草木にとけこまなくっちゃあいけねえ」と。垢石は随筆家で釣りの名人、諭すところは文章道と同じ修行の道だが、井伏先生はそんな厳しい教えは心の底にしまい込み、竿をかついで飄々といそしむ釣り行脚の記である。
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