日没を見越して屋根が閉じられたウィンブルドンのセンターコート。クルム伊達公子とセリーナ・ウィリアムズの3回戦が始まったのは、日本時間の午前4時半頃だった。リアルタイムで観戦した人は多くなかったかもしれない。朝起きて知ったスコアが2-6、0-6、わずか1時間という試合時間では、伊達がその後に言った「今度はハードコートでやってみたい」という前向きな言葉の意味は理解できなかっただろう。しかし、あの1時間を見つめていた人ならわかるはずだ。
パワーテニスの先駆者であり、31歳でなお世界1位の座を維持するセリーナがいきなりサービスエースを叩き込んで、試合は幕を開けた。相手サーブの読みがうまくリターンが得意な伊達も、「まったく読めなかった」と振り返る。結局奪われたサービスエースは8本。リターンエースも11本決められ、女王の驚異的な破壊力には脱帽だった。しかし、少しでも甘くなったサーブには確実に対応し、ラリーに持ち込めば伊達の支配の中でポイントを得ることも少なくなかった。
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photograph by Hiromasa Mano