#815
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<香川・清武・乾を育てた名将に聞く> なぜ、クルピの下で才能は育つのか。

2012/11/05
一つのクラブから欧州に旅立った3人が日本代表の中盤に揃い立つ。
欧州遠征では漫画のようなストーリーが現実になった。
彼らは一人のブラジル人に導かれ、攻撃センスを磨き上げた。
その監督の下では今季も若手が躍動する。なぜ皆セレッソなのか。
古巣に帰ってきた指揮官の言葉から、育成の秘訣を読み解く。

 日本代表欧州遠征・フランス戦の後半、乾貴士がピッチへ。2列目には香川真司、清武弘嗣、乾が並ぶ。3人は勇躍して攻め立てた。その戦う姿勢が終了間際の香川の決勝点を呼び込む――。若き日の3人。彼らはセレッソ大阪でレヴィー・クルピの薫陶を受けていた。

「常に夢を見なさい。成功を収める人間は、誰でも夢を持っているものです」

 その言葉を信じて遥かなる夢を見た香川は、今や世界屈指のビッグクラブ、マンチェスター・ユナイテッドで堂々とプレーする。さらには乾、清武も欧州で成功を見据えている。

「夢を持ったら、実現するための橋を渡らなければなりません。その途中には女、金、酒、多くの障害が待っているでしょう。夢を実現するには、数字を残し続けること。一つ一つの試合に人生が掛かっているのですよ」

 そのブラジル人監督が口にする言葉には、心に響く力がある。

「3試合で3引き分けなら、1勝2敗の戦いを私は選びます」

Levir Culpi
1953年2月28日、ブラジル生まれ。母国でインテルナシオナルやサンパウロなど強豪を率いた。'07年途中から10年ぶりにC大阪監督に就任。独自の攻撃サッカーをチームに根付かせ、'10年J1に昇格を果たし、3位に。昨季限りで退任したが、今年8月に電撃復帰した。

 今年8月、クルピは古巣、セレッソ大阪の監督に復帰している。14位と残留争いをするクラブを引き上げるため、昨季まで5シーズンに渡り指揮を執っていた名将は舞い戻ってきた。並の監督なら、負けられない重圧を感じて萎縮しかねないところだろうが、59歳の指揮官は少しも怯んでいない。

「3試合で3引き分けなら、1勝2敗の戦いを私は選びます」

 クルピは勝負の流儀を説明する。

「勝利の勝ち点は3です。引き分け三つで同じ勝ち点なら、勝ちを目指して3試合を戦った方がいいのは当然でしょう? なぜなら、フットボールは情熱のスポーツです。最高の感動をもたらすのは得点。ゴールは選手の力になるのです。にもかかわらず、90分間相手に点を取られないことだけを考えてプレーするなんてナンセンスですよ。バルサ、レアル・マドリー、サンパウロ……いい攻撃をするチームが偉大な歴史を作ってきました」

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photograph by AFLO

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