小林繁が波乱に満ちた57年の生涯を閉じた。どんな状況でも決して愚痴をこぼさない、そういう男だった。
小林を思い出す上で忘れられないのは、やはり1978年「空白の一日」である。
騒動の末、江川卓とのトレードで巨人から阪神に移籍したが、心の底では反発もあったに違いない。翌年、対巨人戦で8連勝を記録。2度目の沢村賞に輝いた。
今にして思えば、'70年代は全てが巨人中心に動いていた。ふたりは何でも我々の思い通りになる、そう思っていた巨人の犠牲者だったのかもしれない。
韓国プロ野球チームでコーチ人生が大きく変わった。
移籍後も不満を洩らすことなく、毎年2桁勝利を挙げていた。しかし'82年オフに「15勝できなければ辞める」と突如引退宣言。13勝に終わった翌年、本当に現役を引退した。チームメイトだった川藤幸三が、何で辞めるのかと聞いたところ「右腕に血が通わんのや」と打ち明けたという。「細腕繁盛記」と言われ、無理をして意地で投げ続けた結果だった。
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photograph by KYODO