バレーボールPRESSBACK NUMBER

声が震え、涙が頬を…「すごく怖くて」女子バレー佐藤淑乃24歳が苦しんだ“レギュラー2年目の壁”の正体「今年はたくさん勉強になった」

posted2026/09/02 11:00

 
声が震え、涙が頬を…「すごく怖くて」女子バレー佐藤淑乃24歳が苦しんだ“レギュラー2年目の壁”の正体「今年はたくさん勉強になった」<Number Web> photograph by JVA/AFLO SPORT

対戦相手の徹底マークもあり、プレーに迷いが生まれていた佐藤淑乃(24歳)

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

PROFILE

photograph by

JVA/AFLO SPORT

 観客数434人。ショートサーブを取ろうと体を投げ出したリベロ・福留慧美の「うっ」という小さなうめき声までスタンドに聞こえるほど、アジア選手権・3位決定戦が行われていた天津オリンピックセンター体育館はガランとしていた。

 日本はその前夜、タイとの準決勝に敗れ、今大会最大の目標だった「優勝してロサンゼルス五輪の出場権獲得」の可能性は潰えていた。モチベーションが消えかかる中、選手たちはそれでも気持ちを奮い立たせた。3位に入れば銅メダルだけでなく、来年開催されるワールドカップ(旧世界選手権)の出場権を得られ、そこで再びロス五輪出場にチャレンジできる。

 初めてベスト4入りを果たし勢いづくイランに3-0で勝利し、3位には踏みとどまった。ただ会心の勝利とは言えない。今大会を通して日本のコートには重苦しい空気が漂っていた。コンビネーションがかみ合わない、サーブが走らない、ミスが出て流れに乗り切れない。準々決勝まで1セットも失うことなく勝ち上がっていたものの、解消しきれなかった課題や不安が、準決勝のタイ戦で大きな綻びとなった。

タイ代表の日本人コーチ「笑顔でバレーをする」

ADVERTISEMENT

 対戦前の時点で日本は6位、タイは17位と世界ランキングに差はあったものの、直接対決では接戦になることが多く難敵であることは分かっていた。加えて、五輪出場権がかかっているプレッシャーからか、日本はプレーの精度を欠き、ミスが続く。逆にタイはスパイカー陣が迷いなく腕を振り、多彩かつ力強いコンビで得点を重ね、日本のお株を奪う粘り強さでボールを繋ぐ。すべてにおいて、この日はタイが上回っていた。

 日本を3-1で破って決勝に進んだタイは、3位決定戦の後に行われた中国との決勝戦で、9390人もの観客が詰めかけた完全アウェイの空気の中、フルセットで勝利し、悲願の五輪初出場を勝ち取った。

 地鳴りのような「加油(頑張れ)コール」やブーイングにも屈せず、気迫あふれるプレーで中国の壁を破るタイの姿に、よほど今大会での五輪切符獲得に懸けていたのだろうと思いきや、タイ代表で今年コーチを務めている吉田伸はこう言った。

「優勝を目標に掲げてはきたんですけど、絶対優勝しなきゃいけない、ここで獲らなきゃあとがないという感じではなく、だからみんなプレッシャーを抱えずプレーできた。昨日の準決勝からそうですが、我々は負けても別に何も失うものがないので、チャレンジャー精神で、恐れることなくプッシュできた。タイの選手たちは、結果だけを追いすぎず、まず楽しむ。笑顔でバレーをする。セットを落としても、選手同士で『もっと楽しくプレーしよう』と話し合っていた。これはいけるなという雰囲気がありました」

 楽しむことが、持っている力を引き出すための最高のスパイスであることは、昨年の日本代表が証明していた。だが今年はその姿が影を潜め、多くの選手が悩み、迷っていた。その1人が、昨年代表で初めてレギュラーを勝ち取った24歳のアウトサイドヒッター、佐藤淑乃だった。

【次ページ】 レギュラー2年目の自覚「もっと引っ張っていかなきゃ」

1 2 3 4 NEXT
#佐藤淑乃
#石川真佑
#和田由紀子
#フェルハト・アクバシュ
#関菜々巳
#中川つかさ

バレーボールの前後の記事

ページトップ