バレーボールPRESSBACK NUMBER

男子バレー11連勝のウラに“勝利の女神”が?「ティリさんに責められてると思ったら、冗談だった」フランス人監督の感情まで代弁する新通訳の“スゴイ経歴” 

text by

田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

PROFILE

photograph byVolleyball World

posted2026/07/18 11:03

男子バレー11連勝のウラに“勝利の女神”が?「ティリさんに責められてると思ったら、冗談だった」フランス人監督の感情まで代弁する新通訳の“スゴイ経歴”<Number Web> photograph by Volleyball World

ロラン・ティリ監督の意図を選手たちに伝える郷倉マリーン通訳(中央左)

 トルコ、カナダに敗れ、最後のリビア戦を残した状況で、すでに日本の1次リーグ敗退が決まった。重苦しい空気のなかで行われた前日練習を前に、南部正司・技術委員会委員長が来季に向けた課題を口にする。そこに含まれていたのが、言語の問題だった。

「ティリさんは語学も堪能ですが、本質の深い部分まで伝えるとなると、母国語でないとなかなか難しい。選手も替わり、ティリさんも1年目。これまで日本のクラブを率いてきた実績、経験があるとはいえ、代表はまた違う世界です。ティリさんが伝えたいことをもっとストレートに深いところまで伝えられて、ティリさんのストレスを少しでも軽減させられるように、来シーズンはもう少し方法を考えていこうと思うんですよ」

 実はティリ監督も、母国語ではない英語に苦手意識をもっていた。そう振り返るのは、筑波大在学中からティリ監督のもとで5シーズンプレーしてきたミドルブロッカーのエバデダン・ラリーだ。

ADVERTISEMENT

「(ティリ監督が指揮していた大阪)ブルテオンの頃から『英語は得意じゃない』と言っていたんです。それは僕らも同じで、言っていることは何となく理解できても、深くはわからない。たとえば、ティリさんが厳しい言葉を発したら、イライラしているのかな、怒っているのかなと、ちょっと身構えていたんです。実際に去年の世界選手権でも、選手とティリさんのテンションは違った。ティリさんは『エナジーを』と、言っているけど、僕らにはイマイチその意味が理解できず、温度差が生じることもありました」
 
 そこで登場したのが、マリーンさんだ。ベンチにこそ入らないが、密なコミュニケーションの必要性が生じる練習時、ティリ監督が発する一つ一つの言葉を、その意味までも噛み砕いて、日本語に変換し、選手たちに伝えている。

「ステップを踏め」は「重心移動」

 昨季も日本代表でセッターとして1シーズンを過ごした永露が挙げる例は実に具体的だ。

「(大阪ラウンドの)会場練習の時にティリさんから『ステップ、ステップ』と言われた後に『踏め』と言われたんです。でもそれが何を指して、どういう意味なのかよくわからなかった。バレーボールの中ではブロックやレシーブ、いろんな時に『ステップ』を使うから、どのステップを指すんだ? と思っていたら、マリーンさんが『重心移動』と訳して伝えてくれた。それを聞いて初めて、ティリさんが今言っていた『踏め=ステップ』はプレーのことじゃなく、違う意味だったんだ、と理解できた。小さいことのように思われるかもしれないですけど、僕らにとっては大きなことですね」

 ミックスゾーンで取材に応じたティリ監督も、現状の体制に手応えを感じている。フランス語を扱える通訳が入ったことでの変化を尋ねると、ジェスチャーを交えながら「いっぱい語れるようになりました」と満面の笑みを浮かべた。

「私が使っているフランス語の用語が、日本では浸透していないこともある。たとえば、フランス語では『しっかり踏む』という意味で伝わる言葉でも、日本語は違う。『それでは伝わらないよ』とマリーンに教えてもらって、コーチたちと相談したらこのワードのほうが響くからと『重心移動』という言葉で伝えてくれた。それは1つの例ですが、細かいことまで伝えることができるのは本当に大きい。選手たちにも『お互いコミュニケーションを取るように』と伝えているし、選手たちも私も、自分の言葉に責任を持って一人一人に接していく。そのメッセージが届けばいいな、と思っています」

【次ページ】 「マリーンさんがティリさんの冗談だと教えてくれた」

BACK 1 2 3 4 NEXT
#ロラン・ティリ
#郷倉マリーン
#永露元稀
#エバデダン・ラリー
#石川祐希
#フィリップ・ブラン

バレーボールの前後の記事

ページトップ