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セ・パ交流戦を全18日程連続生中継! 徹底的にデータにこだわる、あの全国無料放送局 BS10 プロ野球中継の裏側
posted2026/05/25 10:00
豪華な解説やゲストが出演する、BS10のプロ野球中継
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Shiro Miyake
シーズン中はあちこちで野球観戦をしている筆者だが、デスクに向かっている時は野球中継を点けている。最近、いいなと思っているのはオフチューブ(現地映像にスタジオから実況、解説をつけるスタイルの放送)の野球中継だ。現地実況中継のような臨場感はないが試合展開をしっかり把握できる。ただし、優秀な実況アナ、解説者がいることが前提だが。
都内のスタジオでBS10(ジャパネットブロードキャスティング)の野球中継の現場を取材した。この日は、楽天モバイル 最強パーク宮城での楽天、オリックス戦。
試合が始まると、打者、投手の特徴、今季の戦績などが的確に紹介される。試合が動くとその都度、解説者がコメントする。アナウンサーは短く、鋭い言葉で実況する。解説の松井稼頭央氏は「打者が投手をどう攻略しようとしたか」など選手の意図と、その結果がどうなったかの因果関係を端的に、わかりやすく説明。その掛け合いが良いテンポだ。
スタジオの「4人目の出演者」
BS10の野球中継の特色は「データ」がしっかり紹介されること。この試合、オリックスの先発は身長213cmのショーン・ジェリー。最速148km/hほどの速球をNPBの各打者が打ちあぐんでいた。放送画面には、興味深いデータが出た。ジェリーは速球系ボールの54.9%を高めに投げ込んでいる。変化球の69.8%は低めのゾーン。長身投手は角度のある速球を低めに投げ込むかと思われるが、ジェリーは反対に速球系を高めに投じ、変化球を低めに集めることで打者を打ち取っていたのだ。
実は、スタジオには「4人目の出演者」がいる。日本のスポーツデータのパイオニアと言える「データスタジアム」のアナリスト、伊丹雄斗氏だ。データスタジアムが独自に記録した選手個別のデータを表にまとめ適宜紹介する。
「そうか、ジェリーはそういう配球で打者を退けてきたのだ」
と観ていると、楽天打線は、初回からストライクをどんどん打って安打にしていく。あっという間に点が入った。楽天は早くから弾道測定器「トラックマン」を導入するなどデータ野球に強い球団だ。ここまでのジェリーの投球をしっかり分析し、高めのフォーシームに的を絞って攻略しているようだった。データの裏付けがあることで、両軍、選手の「意図」が明確に見えてくる。
放送ごとに設定されるテーマ
BS10の野球中継のもう一つの特色は、毎回「テーマ」が設けられること。この日は「トリプルスリー」。もちろん、この日の解説の松井稼頭央氏にちなんだテーマだ。
松井氏は2002年、36本塁打、33盗塁、打率.332でNPB史上8人目のトリプルスリーを達成している。スイッチヒッターでは初の達成だ。松井氏自身は「30本塁打は思ったよりも簡単にできたが、盗塁が難しかった」と振り返る。ここでまたデータ表が表示される。
この年の松井氏は193安打を打っていたが、これは10人・12度のトリプルスリー達成者の中でもダントツの1位。松井氏は「この年は200安打を狙っていた」と語る。この当時、200安打は1994年のオリックス、イチローが記録しただけ。もし200安打をクリアしていたら、「トリプルスリーと200安打を同時達成」という破天荒な記録になったはずだ。
筆者は野球記録マニアだが、野球中継で、こういう通好みの話がたくさん聞けるのは、実に楽しい。
ゲストのモデル秋山未有さんは、オリックスのユニフォームを着ている。ファン代表というところ。SNSでもオリックスの話題を発信したりしているが、このマニアックな話題にしっかり加わって、オリックス選手の情報をいいタイミングで入れていた。
スタジオ内にいいにおいが漂いだした。見学している筆者の隣で、見慣れたTシャツの男性が忙しそうに立ち働いている。京セラドーム大阪で焼肉の丼などを販売している「大阪焼肉・ホルモンふたご」の店の方だ。筆者は京セラドームの三塁側によく行くが、いつもこのブースの前を通る。「大阪焼肉・ホルモンふたご」の丼は、「いてまえドッグ(ホットドッグ)」と並ぶ京セラドーム名物だが、スタッフがスタジオに来て丼を作っていたのだ。
早速、松井氏と秋山さんが試食する。ふつうこういう「消えモノ」は、ゲストが箸をつけるシーンを撮影すれば、文字通り「消える」ものだと思うが、二人はどんどん箸を進める。番組の終わり際に、今度は「ふたごの極み W焼肉丼」が出されたが、これもしっかり食べていた。
試合は楽天、ウレーニャの好投で楽天が3-0でオリックスを下した。2時間46分という引き締まったゲームだったが、筆者には現地で試合を観戦したかのような充実感があった。
試合後、松井稼頭央氏に話を聞いた。松井氏の現役時代は、野球界に「データ化」の波が押し寄せた時代だ。松井氏はNPBとMLBで「データ野球」を経験している。そのあたりを聞くことにした。
自身を変えた土井正博コーチの指導
――松井さんは1994年に西武ライオンズに入団されましたが、その当時はデータをどういう感じで活用しましたか?
「当時もスコアラーの方から配球とかの情報をいただきましたが、当時はまだ手書きのメモで、直近と過去の情報が書かれていて、すごくシンプルでした。スコアラーの方がそれを見ながら説明をするんです。
今ならゾーンごとの配球も、すごくたくさんの情報が書かれていますが、たくさんの情報が入っていると僕なんか『結局、どこを打つの?』と思ってしまう。
でも当時は本当にピンポイントでかえってデータが活用しやすかったですね。いろいろデータをもらってもやることは一つ、バットを振ることですから」
――記録的にみると第1次の西武時代の松井さんは「7年連続170安打」というものすごい記録を作っています。
「僕はスイッチヒッターですが、スイッチはどうしても打撃が小さくなる傾向があって、当時の打撃コーチの土井正博さんが『稼頭央がストライクと思ったボールは全部振ってきなさい。高めだろうが低めだろうが、まず手数を出していくことが大事だ』というすごくシンプルな指導をしてくださって、打席に迷いなく立てたのが大きかったですね。僕は当時3割打つことを考えていて、170本安打を打ったら3割に近づくと思っていたのでヒット1本1本、貪欲に狙ってましたね」
所属球団で異なったデータ活用
――2004年にMLBのメッツに移籍しました。当時、アスレチックスが野球の統計学である「セイバーメトリクス」を取り入れて成功していましたが、その影響はありましたか?
「いや、当時のメッツは全然なかったですね。MLBとは別の会社がデータをとって提供していて、ヤンキースのデレク・ジーターなどはそれを利用していたようですが、僕らはチームのスコアラーのデータを見ていました。
ミーティングがすごくシンプルで、今日の先発投手、球速は何マイルから何マイル、変化球何マイルから何マイル。このピッチャーはツーシームがいい。中継ぎはこのスピードで、という感じです。僕はそれを見て、配球や攻め方、球種などを頭に入れて、打席に立っていました。
2006年にコロラド・ロッキーズに移籍しましたが、ロッキーズはベンチの裏にパソコンがあって自分の打席をすぐに振り返ることができる。それを見て、今、こういう風に打っていたのか、じゃあ次こうしようかと考えることができるようになりました」
――やっぱりデータはあった方がいいと思いましたか?
「僕は自分のイメージと実際の映像を照らし合わせたいんです。自分ではいいと思っていても、打席を見たらやっぱおかしなスイングしていたとか、そういうのを確かめたいんですね。そういうデータ活用をしていました」
――そして2011年に日本球界に復帰し、楽天に入団されました。この年、パ・リーグの最多二塁打(34本)を記録しています。
「え、そうなんですか? 知らなかった。ただ、僕にとっての『長打』は二塁打だと思っていて、いつも右中間、左中間を抜けたらいいなと思っていました。角度によってそれがホームランになればいいと。ホームランは狙ったことはないです」
――最後は西武に戻って。40歳を過ぎていましたが、足も速くて若々しいなと思っていました。
「現役である限りは走れないと、と思っていたのでそれは意識していました」
――引退して、コーチ、監督になられましたが、もうこの時期にはデータはしっかり見ていましたか?
「もちろん打球速度も、投手の回転軸なども『トラックマン』を置いてタブレットを見て選手と話していました。この時期になれば、チームでデータを共有していましたし、使うのが当たり前でしたね」
――そして解説者として、野球のデータをどのように活用していますか?
「例えば楽天の辰己涼介選手、去年と今年では、逆方向に打つパーセンテージが上がっています。彼の打撃が好調なのは、これではないか、とかデータをもとに推測できます。
僕の経験をデータで裏付けして解説している感じですね。また、データを見なければわからない選手の特徴を発見することもあります。そういう形で、解説にもどんどんデータを活用していきたいですね」
番組の「第4の出演者」、データスタジアムのアナリスト、伊丹雄斗氏はどういう考えでデータを提供していたのだろうか?
「公式記録だけでは見えない、弊社独自のデータを使って、なるべくわかりやすくお伝えするっていうのを意識していますね。幅広い層の方が見ていらっしゃると思うので、まず見てわかりやすいデータ、選手の特徴が出るデータをなるべく多く出そうと意識しています」
松井稼頭央が期待を込める意外な選手
まもなく「セ・パ交流戦」が始まる。BS10は、交流戦期間中、全18日程で連続生中継する。これは全国無料放送では初めての試みだ。ここでもデータがふんだんに盛り込まれる。松井稼頭央氏は、どんな選手に期待しているのだろうか?
「今日の中継放送でも名前を出しましたが。広島の平川蓮選手に注目しています。僕と同じスイッチヒッターで、あれだけ上背があって(187cm)、1年目であれだけ振れる選手、見たことないので。交流戦で何かきっかけをつかんでほしいですね。
それから交流戦では、2024年の日本ハム水谷瞬選手のように、注目されていない選手がいきなり活躍することがあります。そういうのも楽しみですね。僕も、わくわくしながら交流戦を観たいと思います」
BS10は、解説陣も充実している。データスタジアムの詳細な情報もある。連日放送される交流戦、じっくり楽しみたい。











