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小國以載37歳「こんな奇跡があるんか」“井上尚弥とも拳を交えた”強敵タパレス撃破のウラ側「4ラウンドまで絶対にボディを打つな」敗れたタパレスは涙
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2026/04/04 17:04
元2団体統一王者マーロン・タパレスを攻める小國以載。苦手なサウスポーを克服してアップセットを成し遂げた
「4ラウンドまでボディ打たない」戦略ズバリ
殊勲の勝者はこの勝利を「奇跡」と表現したが、アップセットを実現させるための戦略は周到に用意していた。
「4ラウンドくらいまでは絶対にボディを打つなと。そうしないと、相手がしんどくなってきたときにボディが効かない。バテさせて、我慢して、後半勝負。だから1から3ラウンドは取られてもいい。もしボディを出す前に倒されたら、それがオレの実力なんやと。阿部さん(弘幸トレーナー)とそう話していたんです」
リーチがあり、スタイリッシュなボクシングをする小國だが、近年は打ち合う試合が増えていた。阿部トレーナーは「タパレスはこっちがもっと出てくると思ったはず」と明かす。我慢して、我慢して、待つというスタイルは「相手の裏をかく」という意図もあったのだ。
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小國は温めていた戦略を大胆かつ細心に実行した。自分より10cm背の低いタパレスに対し、盛んにフェイントをかけながら距離を取り、ジャブは踏み込み過ぎずに相手の手に当たるくらいに抑え、作戦通りボディブローは打たなかった。
業を煮やしたタパレスがエンジンをふかしたのは3回だった。しっかりガードを固め、上体を振りながら圧力を強めると、小國に重厚なコンビネーションを見舞う。タパレスの当日体重は65.0kgで小國のそれより6.6kgも重い。これは井上戦での63.5kgよりも重く、その情報は小國の耳にも届いていた。タパレスはパワフルだとしても、スタミナに難があるのではないか。小國はていねいにタパレスの攻撃を防ぎ、チャンスの到来を粘り強く待った。
小國が満を持してボディブローを打ち始めたのは5回だ。射程の長い右ストレート、きれいに腕を折りたたんだ左アッパーをボディに突き刺すと、タパレスの動きがみるみる落ちていく。6回にはタパレスの手数がめっきり減った。アップセットへの期待が一気に膨らみ、後楽園ホールは激しくヒートアップした。
あのタパレスがダウン寸前に…敗戦後には涙
7回、一番の見せ場が訪れる。嫌な流れを食い止めようと前に出てきたタパレスに対し、小國が接近戦を受けて立つと、小國のボディ攻撃を受けたタパレスは嫌がって横を向く素振り。あのタパレスがダウン寸前である。ダメージを負った元2階級制覇王者を支えているのはもはやプライドだけだ。

