2025年M-1・連続インタビューBACK NUMBER
「本当にあれが嫌でしたね…」準優勝ドンデコルテが語る“M-1の苦しみ”…40歳まで“売れない芸人”渡辺銀次とは何者なのか?「貧困層に属します」が生まれるまで
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byShigeki Yamamoto
posted2026/01/25 11:11
結成6年、初のM-1決勝で準優勝したドンデコルテ。小橋共作(ツッコミ担当、36歳、写真左)と渡辺銀次(ボケ、ネタ作り担当、40歳)
渡辺 そういえば、『デジタルデトックス』って、これくらいウケるネタだったんだよな、って思い出しました。
小橋 何回もやり過ぎて、どこかおかしくなってたのかな。
――貧乏ネタって世に出てない芸人の定番ですけど、渡辺さんほどそれを品よく語った人はいないと思うんですよ。「金ねーんだよ」と言わずに「国も認める低所得」と表現してみたり。そこから、おかしみがあふれていましたよね。
ADVERTISEMENT
渡辺 武士は食わねど高楊枝って言うんですかね。要は、見栄です。
――どんなにお金はなくとも、心まで貧しくなっちゃいけないんだ、と。やせ我慢というか、ある種の美学を感じました。
渡辺 張りぼてと言えばそうなんですけど。池波正太郎さんの歴史小説が一番好きなのも、登場人物のそういうところに惹かれるのかもしれませんね。
「大吉さんが91点で、終わったと思った」
――点数が出るときは、そこそこ自信はあったのですか。
渡辺 どうかなと思っていたら、いきなり(博多)大吉さんが91点で、終わったと思いました。
――そうか、1人目はそんなに低かったんですね。
渡辺 でも駒場さんが95点で「まだ、あるかも」と思ったら、次の塙さんがまた91点で。ああダメだと思ったら、山内さんが95点。おい、あるぞ、と。
小橋 で、後藤さんが93点。
渡辺 ああ、ダメか……。哲夫さん「95」。あるぞ。柴田さん「94」。どうだ? ともこさん「95」。えっ? 礼二さん、「96」。あるんじゃね? 合計、845点。あったー!
「あそこは本当に嫌だったな…」
――ジェットコースターのように気持ちが乱高下し、最終的に1点差で暫定3位の真空ジェシカを上回ったんですね。
渡辺 大穴が来た感じですよね。僕は優勝するしないはわからないですけど、ネタは2本やりたいと思っていたんですよ。
小橋 僕もどうしても『名物おじさん』は、みなさんにお見せしたかった。
――その悲願まで、残すところあと2組でした。
渡辺 あそこは嫌だったな……。ネタを見ながら、他のコンビの得点が自分たちより低くあって欲しいと願うわけですから。
――それが人情というか、当然の心理なのでは?
渡辺 でも、われわれが芸人になったのは、おもしろいもんが好きだからなんですよ。おもしろいもんを愛せなくなったら、もう終わりじゃないですか。自分たちが勝ちたいという思いは、そこと矛盾する感情なんです。それが本当に嫌でしたね。
(写真=山元茂樹)


