濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
2009年生まれの中学生レスラーが目指す文武両道…美蘭(14歳)が観客を驚かせたド迫力エルボー「中学生、高校生のレスラーは意識します」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2024/03/24 17:00
スターダムの新人王座に挑戦したディアナ所属の中学生レスラー・美蘭(14歳)
飛び技を得意とする美蘭はその場飛びのムーンサルトプレス、ライオンサルトで観客を沸かせた。加えてエルボーが強い。吏南に打ち込んだ時の“ゴツッ!”という音も見る者を驚かせた。レスラーのほぼ全員が使う“基本技”とも言えるエルボーに、美蘭はこだわりを持っている。ディアナの先輩である梅咲遥が、エルボーの威力で知られる選手なのだ。
「遥さんに憧れてプロレスラーになって、遥さんを見て育ったので。遥さんのように強いエルボーを打ちたいといつも思ってます」
ディアナは代表が井上京子で、所属選手にはジャガー横田もいる。前タッグ王者は京子と貴子の“W井上”。昭和からの女子プロレスの流れ、歴史と伝統を受け継ぐ団体と言っていい。「平成21年」生まれの美蘭も、その流れの中にいる。
毒舌の対戦相手も絶賛した素質
吏南との試合では、ジャガー横田から伝授された旋回式ボディアタックも披露。結果としては負けだったが、試合内容はほぼノーミスで、決めるべき技を的確に決めていたのも印象に残る。勝負度胸、あるいは基礎的な能力のレベルが高いということではないか。
そこで思い出したのが、ディアナのプロテストだ。ロープワークや受身、体力テストの後に行われるのがスパーリング。タックルで相手を倒し、抑え込んで3カウントを取るというもの。分かりやすく表現すると「プロレス技の攻防」ではなく「3カウントフォールのレスリング」のスパーリングだ。1月には、美蘭が後輩のプロテストでスパーリングの相手を務めた。
試合で頻繁に使う動きではない、けれど間違いなくこれが基本になる。そういう「レスリング」の練習に、ディアナは常に取り組んでいるそうだ。
「プロレスにはいろいろなタイプの選手がいるので。どんな選手と闘っても対応できるように練習しています」
飛び技が得意な中学生レスラー。しかしその“芯”は相当に太い。それを感じ取ったのか、普段は毒舌の吏南も美蘭を絶賛。美蘭が試合後に望んだように、タッグを結成することもありそうだ。
「中学生、高校生のレスラーはやっぱり意識しますね」
もちろん今後もフューチャー王座を狙っていく。団体内での今の目標はタッグ王座。1月からフリーの世羅りさとのタッグ「ブルーオーキッド」が始動し、かなりの手応えを感じているという。14歳とはいえもうすぐキャリア2年。実力を蓄えてきて、そろそろ“結果”を求める時期なのだろう。