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「死ぬ思いで練習してきた」中谷潤人の強烈な一撃が“ドネアに勝った王者”のアゴに炸裂…苦戦説を一蹴する「圧巻のTKO」はこうして生まれた
posted2024/02/25 17:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
WBCバンタム級タイトルマッチが2月24日、両国国技館で行われ、元WBOスーパーフライ級王者の中谷潤人(M.T)が王者のアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)を6回1分12秒TKOで下して新チャンピオンに輝いた。中谷はフライ級、スーパーフライ級に続いて3階級制覇を達成。激戦のバンタム級で“ネクストモンスター”が圧倒的な存在感を示した。
関係者の間で囁かれた「中谷苦戦説」
「チャンピオンに挑戦することは、自分の中でターニングポイントになる。自分により期待してもらえるような勝ち方ができれば未来が拓けると思う」
試合前日の計量を終えたあと、中谷は今回の試合を「ターニングポイント」と表現した。フライ級とスーパーフライ級の世界王座はいずれも王座決定戦で獲得したもの。つまり中谷が世界チャンピオンに勝利したことはない。さらに今回はひとつクラスを上げてバンタム級での世界タイトルマッチだ。「この試合に向けて、ロサンゼルスでも日本でも死ぬ思いで練習してきた」。あまり強い表現を使わない中谷の発言だけに、この試合にかける並々ならぬ思いが伝わってきた。
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中谷はデビューから26戦全勝で、サンティアゴは36戦して28勝3敗5分。王者は昨年、ビッグネームのノニト・ドネア(フィリピン)に土をつけて戴冠したとはいえ、これがまだ初防衛戦であり、評価の定まらないチャンピオンだった。海外のブックメーカーは大きく中谷優位のオッズをつけていた。
ところが、国内の関係者と話をすると、「今回の中谷は苦戦するのではないか」という声が予想以上に多いではないか。10代のころから中谷を指導する岡辺大介トレーナーも「サンティアゴはやりにくい」という感触を強く抱いていた。
「速いというか、出入りが上手で難しい相手だと思う。出てきてくれたらいいけど、追いかけてつかまえるのは難しい。受けるだけではポイントを取られてしまうので、しっかり打ち返さなくちゃいけない」
身長は中谷が172センチ、サンティアゴが159センチ。背の高さ、リーチの長さはアドバンテージになるが、いったんインサイドに入られてしまうと難しい。相手の頭がじゃまになるし、下から突き上げられると体力も消耗する。背の低いトップ選手はたいてい馬力があるものだ。サンティアゴはいわゆる“曲者タイプ”で、それが正統派である中谷を苦しめる、とも考えられた。