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暴力指導、昭和の常識を変えよう!“日本一3回の少年野球クラブ”監督が猛省した保護者のアンケート「世界一楽しくと言っていますが…」
text by
辻正人Masato Tsuji
photograph byKANZEN
posted2023/07/17 17:00
「多賀少年野球クラブ」の監督が考える少年野球の問題点とは?
なぜ選手にサインを出すことをやめたのか
私が選手にサインを出すことをやめてから10年以上が経ちました。中には、どうやったら選手がノーサインでプレーできるのか、普段どんな指導や練習をしているのか話を聞きに来たり、グラウンドへ視察に来たりする監督やコーチがいます。北は北海道、南は九州・沖縄まで全国から指導者が訪れ、最近はバレーボールやゴルフといった競技の異なる指導者も増えています。さらに、スポーツとは関係ない会社経営者も練習の視察に来ています。
多賀少年野球クラブを参考にして、実際にサインをやめたチームもあります。ただ、ノーサインのチームは思ったほど増えていません。その理由は、「監督がサインを出して選手を動かす方法がベスト」と疑っていない指導者が多いからだと思います。
時代が変わり、野球の理論や技術は変化しています。「ゴロは体の正面で捕る」、「バッティングは打球を叩きつけてゴロを打つ」といった昭和の常識は、令和の非常識になっています。野球が進化すれば、常識や正解も変わっていきます。少年野球も社会の変化に対応する必要があります。
よく考えてみてください。試合中、1つ1つのプレーに細かく監督が選手に指示を出すスポーツは野球だけです。サッカーもラグビーもバスケットボールも、選手同士でサインを出したり、アイコンタクトを取ったりしています。選手には、その場に応じた判断や決断が求められているわけです。
リスクという言葉を使って行動していないのではないか
それから、選手たちに任せるノーサインを始めてから、リスクについて度々、質問されます。多賀少年野球クラブは、私がサインを出していた頃も毎年のように全国大会に出場していました。先に話したように、ノーサインへの方針転換を決めたきっかけとなった2011年のマクドナルド・トーナメントも3位でした。そのままでも十分強いのに、ノーサインに変えて失敗するリスクを考えないのかという質問です。