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「朝起きてゲームして、食べもの注文してまたゲーム…」トレーニング嫌いの角田裕毅を変えたある出来事とは《成長著しい2年目》
posted2022/05/27 06:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images / Red Bull Content Pool
スペインGPが始まる前、角田裕毅と彼が所属するアルファタウリに対し、周囲の評価は厳しかった。開幕から2カ月が経過し、ヨーロッパに戻って開催されるレースに、ライバルチームはこぞってマシンに新しいパーツを投入した最新仕様を持ち込んできたのに対して、アルファタウリは2週間前と基本的に同じ仕様だったからだ。
だからといって、角田のモチベーションが下がることはなかった。
「現在のF1はバジェットキャップによってマシンの開発が制限されています。ほかのチームがシーズン前半にどんどんアップデートすれば、いずれ開発に使えるお金が尽きて、後半アップデートできない。僕たちはそうならないよう、やみくもに小さなアップグレードを繰り返すよりも、しっかりと走行データを収集して方向性を定めて、確実にアップデートしていくことにしています。だから、そのためにこのスペインGPではしっかりと走行データを収集しようと思っています」
チームの方針を理解し、共に戦う姿勢を見せていた角田にとって、スペインGPは苦い思い出があるレースだ。昨年ルーキーとしてF1に参戦した角田は開幕戦こそ入賞を果たしたものの、その後はクラッシュやミスが続き、序盤戦はなかなか思うような走りが披露できなかった。その状況に苛立ったのか、Q1で敗退した予選後に無線で「こんなク◯マシンじゃ戦えないよ」と叫んだだけでなく、予選後のテレビ局のインタビューで「チームメートと本当に同じクルマなのか、疑問に感じている」と、チーム批判ともとれる発言をして話題となった。
あれから1年、スペインGPの予選で、角田は再び厳しい戦いを強いられ、予選はQ2脱落に終わった。だが、予選後に取り乱すこともチームを批判することもなかった。その姿にこの1年間の成長を感じた。
太くなった首まわり
精神的だけでなく、肉体的にも今年の角田は、たくましくなっていた。
昨年の前半戦に角田が思うように結果が残せなかったのには、チームと意思の疎通を欠いていただけでなく、角田自身のフィジカル的な問題もあった。
元々、角田はトレーニングが嫌いで、有名だった。
「イギリスに住んでいたときは本当に良くなかった。朝起きてゲームして、その後、何か食べるものを注文して、またゲーム。そして、また何か食べるものを注文するという毎日でした」