この躍動には「パワフルな打撃で足もあるし、140キロ投げる肩もある。ポテンシャルの高い選手ですね」とロッテ・小林敦スカウトが語るなど、各球団のスカウト陣も続々と調査書を持って三島南を訪れており、11球団から調査書が届いた。

　稲木監督が「超天然素材」と評するように、プロの環境で練習をやり込んだ時の可能性は無限大にある。それを生かすも殺すも前田次第ではあるが、前田には誰よりも大きな武器として、野球を楽しみ、ポジティブに向き合う姿勢があるだろう。

　前田は期待に胸を膨らますとともに、謙虚な言葉も並べる。

「パワフルなバッティングや広い守備範囲、常に先の塁を狙うというのがプレースタイルだと思います。でも、公立高校で僕はまだ競争の経験が少ない。だから、謙虚な心で相手を尊敬しながら、相手の良いところを盗んで、いずれは追いついて抜いていくんだという気持ちを持ち続けることを大切にしていきたいです」

真剣な表情でバッティング練習に取り組む前田　©Yu Takagi

　三島南の21世紀枠選出の決め手となった要素には、地域の子供たちへの熱心な野球振興活動がある。そこで前田から指導を受けた子供たちのためにも、そして私たちファンのためにも、野球の楽しさを存分に伝えられる選手になって欲しい。