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柔道も野獣もやめた金メダリスト 松本薫が“本気でアイスを作る”理由とは〈ロンドン五輪後には1日4食パフェ〉
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKeigo Amemiya
posted2021/07/31 06:00
店を訪れるとかっぽう着姿で店先に立っていた松本薫。その表情に野獣の面影はもうない。
ロンドン五輪後、1日4食パフェ。
そんな松本だからこそ今回の転身も伊達や酔狂で決めたことではない。発案の原点は2012年ロンドン五輪にあった。
金メダルを獲得し、大きな重圧から解放された試合翌日の会見や帰国会見で、松本は「ビッグパフェを食べたい」と各所で発言した。金メダリストのそれぐらいの希望はすぐに叶ってしまうのが日本という国である。
「あの時は1日4食パフェが出てきた。それだけパフェやアイスクリームを食べていると、なんか太ったり、胃もたれしたり、どんどん体に異変がきたんです。あれでもっと体にいいアイスクリームがあったらな、もっとみんなを笑顔にできるアイスがあったらな、という視点ができました」
トレーニングでは山を走り、仙人になりたいと言い、野性の勘を研ぎ澄ませていた松本だからこそ、体の変化には人一倍敏感。そこに柔道家の思いもトッピングされた。
「アスリートとして減量があり、減量すると体の中の水分が抜けて熱くなるので、みんなアイスを食べる。そんなときに毎日食べられるアイスクリームが欲しいなと思っていた。だから引退を機にアイスクリームを作ることになりました」
グルテンフリーの妥協しないアイス。
松本の発案を元に、所属先のベネシードと東京富士大による産学協同プロジェクトが立ち上がり、松本自身も商品開発を含めて深く関わってきた。
元来、欲しいスイーツがあれば自分で作ってしまうほど料理上手でもある。スタッフと一緒に何度もテイスティングを重ね、乳製品や白砂糖などを使わず、グルテンフリーで、もちろん味でも妥協しないアイスクリームに行き着いた。
こうして柔道金メダリストとアイスクリームが一本の線でつながったのである。