スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大谷翔平と歴史的快挙。球団史上最速の“打球の初速”、リアル二刀流で目指す“未踏の領域”とは
posted2021/04/10 06:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
大谷翔平とロサンジェルス・エンジェルスが、まずは幸先のよいスタートを切った。
開幕後6試合を経た4月6日現在、チームは4勝2敗の数字を残している。ホワイトソックスと4連戦、アストロズと2連戦、ブルージェイズと4連戦。開幕直後の日程を見る限り、強敵相手のカードが続いて苦戦はまぬかれがたいと思われていたのだが、打線の好調もあって、予想以上の健闘だ。
原動力のひとつは大谷翔平の復調だろう。
春季トレーニングでの爆発的打撃を見て期待が高まっていたことは事実だが、シーズンが開幕しても、その破壊力は弱まる兆しを見せない。
6試合での成績は、20打数6安打2本塁打。6三振はやや多いが、OPS=1.033は堂々たる数字だ。
“リアル二刀流”で放った初速115.2マイルの衝撃弾
とりわけ、本拠地の右中間に叩き込んだ第2号(4月4日の第1打席)本塁打は強烈だった。450フィートの飛距離や、バットがボールを叩きつぶしたのではないかと思わせる衝撃音も凄かったが、打球の初速はなんと115.2マイルに達していた。
これは、スタットキャストの計測数値が示されるようになってからだと、球団史上最速の数字だ(これまでの記録は、2018年6月11日にマイク・トラウトがバックスクリーン直撃弾を放ったときの115マイル)。本格的長距離打者という呼び名がふさわしい日本人大リーガーは、大谷が初めてではないか。
しかも大谷は、この試合(対ホワイトソックス戦)の先発投手と2番打者を兼ねていた。これまた異例の「歴史的快挙」だ。
まず、ひとりの選手が、時速100マイルを超える球を投げ、同じ試合で115マイルを超える打球を放ったケースは、大リーグ史上空前のできごとだ。強打を誇るメッツの剛球投手ノア・シンダーガードでさえ、打球の最高速度は110マイルに届いていない。
先発投手が2番打者を任されたケースも、1903年のジャック・ダンレヴィ(カーディナルス)以来だ。1902年には、セネタースのワッティ・リーも経験しているが、要するに20世紀以降では、大谷を含めて3人だけだ。
ア・リーグの投手で初回にホームランを打ったのは、68年のデイヴ・マクナリー(オリオールズ)以来初めてのケースだ。