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井上尚弥の背中で奮い立った平岡アンディ ラスベガス完勝で得た自信「世界は遠くない」
posted2020/11/08 17:02
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph by
Getty Images
《平岡アンディのルーツに迫る記事も見る!》
2度目のラスベガスでも3度のダウンを奪っての完勝劇――。それでもリング上の平岡アンディ(24・大橋ジム)の表情に笑みはなかった。
「前回のラスベガス以来、約1年ぶりの試合にしては悪くなかったと思います。ただ、ここはあくまで通過点でしかない。2Rではいいパンチをもらってしまったのも課題です。もし世界戦のベルトを争うような相手であれば、あの一発で倒されていたかもしれませんから」
米・トップランク社と契約する無冠の大器は試合後、勝利の喜びよりも近い未来の世界戦を見据えて課題から口を開いた。完璧主義者であり、向上心の塊。その姿勢はどこかジムの先輩である井上尚弥とも重なる。
大橋会長「もうね、持ってるモノが全然違う」
現地時間10月31日、MGMグランド。井上尚弥のラスベガスデビュー戦のアンダーカードに抜擢されたアンディ(スーパーライト級)は、アメリカ人リッキー・エドワーズを寄せ付けなかった。意識して磨いてきたというジャブを効果的にちりばめ、4Rにはラッシュを浴びせてレフリーストップによるTKO勝利。この勝利でパーフェクトレコードを「16」に伸ばした。それでも、アンディにとってこの1年間はもどかしさを感じながらボクシングと向き合ってきた時間でもあった。
今春に予定されていた井上尚弥の統一戦。そのアンダーカードにもアンディの試合が組まれることは当初から既定路線だった。トップランク社のCEOボブ・アラムがその才能に惚れ込み、アメリカでも受けいれられるであろう“倒す”ファイトスタイルに期待を寄せていたからだ。
渡米前には大橋秀行会長もアンディについてこんな表現を用いていた。
「もうね、持ってるモノが全然違う。普通にキャリアを重ねれば世界チャンピオンになれる素材と見ているので。それだけに早くタイトル戦を組んであげたいんですが……」
だが、周知の通り新型コロナウイルス蔓延の影響でボクシング界の時間は一時停止した。今年中に3、4戦こなすことで世界ランクを上げ、来年に世界チャンピオンのベルトを奪いにいく――。そんな陣営の青写真は根本から描き直しが必要となった。